最新記事
ウクライナ情勢

ウクライナ、越境攻撃1週間で奪取した領土面積でロシアを上回る

Ukraine catching up with Russia on weekly territorial gains

2024年8月15日(木)18時00分
イザベル・バンブルーゲン
国境の街を走るウクライナ軍の車両

ロシアが目と鼻の先の国境の街を走るウクライナ軍の車両(8月14日、ウクライナ・スームィ地方)  REUTERS/Viacheslav Ratynskyi

<電光石火の越境攻撃でロシア西部クルスク州で74の集落を制圧、1000平方キロメートルを掌握>

ウクライナ軍の総司令官が公表した新たな数字によれば、ロシア西部クルスク州への進軍を続けるウクライナ軍がこの1週間で奪取した領土面積がロシアがウクライナから奪った領土面積に追いつきつつある。

ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は、ウクライナ軍が12日までにクルスク州で1000平方キロメートル超の範囲を掌握したと明らかにした。ロシアの独立系メディア「Agentstvo」の分析によれば、これはロシアが今年これまでに奪取したウクライナ領の面積を上回っている。

ウクライナ軍は8月6日、クルスク州への越境攻撃を開始。これはロシアにとって不意打ちだったようだ。クルスク州の国境地帯には非常事態宣言が出され、大勢の住民が避難している。ロシア軍はウクライナ東部ドンバス地方の前線から、緊急にこの地域に要員を再配備せざるを得ない事態に追い込まれている。

Agentstvoによれば、ウクライナ軍は越境攻撃の開始から約24時間で、ロシアが2年半超の時間と1億7000万ドル超の資金を投じて築いたクルスク州の2つの主な防衛線を突破した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は13日、ウクライナ軍が北部スームィ州に隣接するロシア西部のクルスク州で74の集落を制圧し、さらに進軍を続けていると述べた。ゼレンスキーは国民に向けたビデオ演説の中で、「厳しく激しい戦いが続くなかでも、われわれの部隊はクルスク州で前進を続けており、ウクライナの『交換の蓄え』が増えている。現在74の集落がウクライナ軍の支配下にある」と語った。

最精鋭部隊を投入

シルスキーはゼレンスキーから、クルスク州への越境攻撃における次なる重要ステップの準備を進めるよう指示を受け、「全て計画どおりに進んでいる」と述べた。

米シンクタンク「外交政策研究所」の上級研究員であるロブ・リーは、ウクライナ軍はポクロウシク、トレツィクとチャシブヤールなどの前線に配備していた最精鋭部隊をクルスク州に進軍させたと指摘した。

ウクライナで「最も困難な前線」にいた部隊を動員したことを考えると、「ウクライナがクルスク州の作戦で目指しているのが限定的な成果ではないことは明らかだ」と彼はX(旧ツイッター)への投稿で述べた。

ウクライナ大統領府のミハイロ・ポドリャク顧問は越境攻撃の開始から2日後、ウクライナの狙いについて、将来的にロシアとの間で行われる交渉で優位に立てるようにすることだと述べた。

ポドリャクはまた、ウクライナ軍がロシア領内で進軍することで、ロシア国民を「怖がらせ」、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対する信頼を揺るがす効果も見込めるとつけ加えた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中国防相会談、米の責任で実現せず 台湾政策が要因

ワールド

ロシア新型ミサイル攻撃、「重大な激化」 世界は対応

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ・S&P1週間ぶり高値 エ

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中