最新記事
ウクライナ

戦時下のウクライナが持つ最強の武器...「IT産業」が驚異のGDP成長率5.3%をけん引する

2024年8月19日(月)13時36分
柴田裕史(在ポーランド、Ago-Ra IT Consulting代表)
戦時下のウクライナで IT産業が驚異の成長を

ILLUSTRATION BY ALEX SHOLOMーISTOCK

<首都キーウや西部リビウなどの主要都市は、テクノロジー企業やスタートアップが集まるハブとして発展。豊富な人材資源を糧に莫大な利益をもたらす>

ロシアの侵攻を受け、2022年にGDP成長率がマイナス28.8%と疲弊したウクライナ経済が、23年に5.3%のプラス成長を記録した。驚異的な回復を牽引したのがIT産業だ。

23年のウクライナIT産業は前年比12.9%成長。IT企業が23年に国家予算にもたらした税金・手数料も、侵攻前の21年から16%増加した。特にソフトウエアやAI、ブロックチェーン技術など最先端分野での躍進が顕著だ。

首都キーウや西部リビウなどの主要都市は、テクノロジー企業やスタートアップが集まるハブとして発展。共同作業スペースやインキュベーターが数多く存在し、最適な環境が整っている。

IT産業が無敵の成長を続ける背景には豊富な人材資源がある。

ウクライナの大学はIT教育が盛んで、優秀で英語に堪能なエンジニアやプログラマーを毎年数多く輩出。政府も税制優遇などでIT産業を重点的に支援する。企業側も戦時下で改革を進め、オフィスに予備電源用の発電機を備えたりネットワークを多様化したりした。

ウクライナのITは国際市場でも存在感を発揮している。外国企業のアウトソーシング先としての需要が高く、周辺の東欧諸国に比べても低コストで、コスパに優れていると評価も高い。

荒廃した経済に莫大な利益をもたらすITは、ウクライナが持つ最強の武器かもしれない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナ復興に凍結資産活用で合意も 和平

ビジネス

AIが投資家の反応加速、政策伝達への影響不明=ジェ

ワールド

不法移民3.8万人強制送還、トランプ氏就任から1カ

ビジネス

米中古住宅販売、1月4.9%減の408万戸 金利高
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中