戦時下のウクライナが持つ最強の武器...「IT産業」が驚異のGDP成長率5.3%をけん引する
ILLUSTRATION BY ALEX SHOLOMーISTOCK
<首都キーウや西部リビウなどの主要都市は、テクノロジー企業やスタートアップが集まるハブとして発展。豊富な人材資源を糧に莫大な利益をもたらす>
ロシアの侵攻を受け、2022年にGDP成長率がマイナス28.8%と疲弊したウクライナ経済が、23年に5.3%のプラス成長を記録した。驚異的な回復を牽引したのがIT産業だ。
23年のウクライナIT産業は前年比12.9%成長。IT企業が23年に国家予算にもたらした税金・手数料も、侵攻前の21年から16%増加した。特にソフトウエアやAI、ブロックチェーン技術など最先端分野での躍進が顕著だ。
首都キーウや西部リビウなどの主要都市は、テクノロジー企業やスタートアップが集まるハブとして発展。共同作業スペースやインキュベーターが数多く存在し、最適な環境が整っている。
IT産業が無敵の成長を続ける背景には豊富な人材資源がある。
ウクライナの大学はIT教育が盛んで、優秀で英語に堪能なエンジニアやプログラマーを毎年数多く輩出。政府も税制優遇などでIT産業を重点的に支援する。企業側も戦時下で改革を進め、オフィスに予備電源用の発電機を備えたりネットワークを多様化したりした。
ウクライナのITは国際市場でも存在感を発揮している。外国企業のアウトソーシング先としての需要が高く、周辺の東欧諸国に比べても低コストで、コスパに優れていると評価も高い。
荒廃した経済に莫大な利益をもたらすITは、ウクライナが持つ最強の武器かもしれない。