最新記事
中国兵器

イタリアでリビア向けの中国製ドローンを押収、UAEなどを通じて途上国中に拡散する実態

US intel helps NATO ally seize China "war drones"

2024年7月4日(木)18時24分
ジョン・フェン

広東省珠海で行われた航空ショーに展示された中国ドローン「翼竜」(2018)Oriental Image via Reuters Connect

<「風力タービンの部品」と偽った貨物は、重さ3トン超、翼幅20メートルにもなる軍用ドローンだった>

イタリア南部の税関・専売庁(ADM)は、アメリカの情報協力を得て1週間前から行ってきたおとり捜査により、リビアに送られる予定だった未申告の貨物を押収したと発表した。貨物の中身は「軍事ドローン」だった。

【動画】さすがに無謀...中国製「ゴルフカート」で進軍するロシア兵、地雷で吹き飛ばされる 衝撃の瞬間が公開

イタリア南端にあるカラブリア州の当局は7月2日、中国からジョイア・タウロ港に到着した6つのコンテナを調べたところ、「軍事目的で使われるドローンの胴体と翼」を発見したと明らかにした。

税関当局の声明によれば、「風力タービンの部品」と偽って送られてきたこれらの部品は実際にはドローンで、組み立てると1機あたりの重量は3トン超、全長が約9.75メートル、翼幅約20メートルになる巨大なものだった。当局が公開した写真から、これらの部品は中国製の軍用ドローン「翼竜」のものであり、中国からアラブ首長国連邦(UAE)を経由してイタリアに到着した。

本誌はこの件について中国外務省にコメントを求めたが、これまでに返答はない。

中国は過去10年で軍用ドローンの開発・輸出を大幅に拡大してきた。世界各地で取引されている中国製ドローンは「翼竜」のほかに「彩虹」や「WJ」もよく知られており、購入国リストにはアルジェリア、エチオピア、インドネシア、イラク、ヨルダン、カザフスタン、モロッコ、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、セルビア、トルクメニスタンやウズベキスタンなど途上国が並ぶ。

リビアへの武器禁輸も無視

エジプト、サウジアラビアやUAEも「翼竜」を購入しており、これらのドローンがリビア東部の軍事組織「リビア国民軍」のハリファ・ハフタル司令官の手に渡ったと報じられている。ハフタルはリビア東部と南部の一部を支配し、2020年から首都トリポリで国連が承認するリビア政府と対立を続けている。

リビアは2011年にNATOの支援を受けた反体制派が最高指導者ムアマル・カダフィ政権を転覆させて以降、10年以上にわたって内戦状態が続いている。国連の禁輸措置により、地中海に面するリビアの港への(およびリビアの港からの)武器および軍装備品の移送は禁止されている。

6月18にはイタリアのコリエレ・デラ・セラ紙が、「米当局の要請により」強制捜査が行われたと報じており、今回当局がコンテナ船の強制捜査を公式発表したことで、報道が裏付けられた形だ。

同紙によれば米諜報当局は、4月に中国南部の塩田港を出発したコンテナ船「MSCアリナ」が、ハフタル率いるリビア国民軍が実効支配するリビア東部ベンガジの港に向かっているのではないかと疑っていたという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪政府が予算案発表、新たな減税盛り込む 財政収支は

ワールド

独IFO指数、3月は86.7に上昇 景気回復期待高

ワールド

米ロ、サウジの会合の結果を分析中=ロシア大統領府

ビジネス

米個人消費が鈍化、物価高や経済見通し悪化で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 5
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 6
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 7
    止まらぬ牛肉高騰、全米で記録的水準に接近中...今後…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    トランプの脅しに屈した「香港大富豪」に中国が激怒.…
  • 10
    ドジャース「破産からの復活」、成功の秘訣は「財力…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中