最新記事
スポーツ

【パリ五輪・パラリンピック】バヌアツの卓球選手とインドのパラ柔道選手をサポートする日本人コーチの存在?

2024年7月26日(金)12時00分
※JICAトピックスより転載

(左)トミー選手に指導する髙嶋さん(右)卓球台が4台並ぶ体育館

(左)トミー選手に指導する髙嶋さん(右)卓球台が4台並ぶ体育館の練習場

バヌアツには卓球連盟はあるものの事務所がなく、髙嶋さんの他にコーチもおらず、スタッフもボランティア。ロンドン五輪に出場した卓球選手でトミー選手のいとこのアノリン・ルル選手が連盟の会長を兼務しながら、トミー選手のマネージャーも担う状況です。そんな環境の中でも、髙嶋さんは熱のこもった指導に加え、日本卓球協会の副会長に依頼して試合球を寄付してもらうなど、練習環境も整えていきました。

そうして臨んだ2つの大会で見事な成績を収めたトミー選手。以前は髙嶋さんが勧めても「勝っているから」とプレースタイルをなかなか変えようとしなかったものの、五輪出場を決めてからはさらなる強敵と戦うため、髙嶋さんのアドバイスを受け入れてラケットのラバーの種類が異なる表裏を使い分けるプレーや、より攻撃的なプレーを練習しています。

「まずは初戦を突破してほしい」。トミー選手への期待と共に、自身初の五輪コーチとしての同行も楽しみだと髙嶋さんは話します。

トミー選手と試合後に握手する高嶋さん

オリンピックのオセアニア予選最終戦で勝利をおさめ、オリンピック出場を決めたトミー選手と試合後に握手

髙嶋さんが指導するバヌアツナショナルチームのメンバー

髙嶋さんが指導するバヌアツナショナルチームのメンバー。左から2人目がトミー選手、同4人目がルル選手。髙嶋さんは、残りの任期で大きな課題でもある若手の育成にも力を入れたいと話す

メダルに絶対の信頼!インドの視覚障害者柔道、モディ首相も注目

インド代表としてパラリンピック出場を勝ち取った、視覚障害者柔道男子のカピル・パーマー選手と女子コキーラ選手は、ともに初めての出場です。二人から絶大な信頼を得ているのが、コーチを務めるJICA海外協力隊の長尾宗馬さん。2022年3月から、インド視聴覚障害者柔道協会に所属して代表チームを指導しています。

カピル・パーマー選手(左から3人目)、コキーラ選手(同2人目)と長尾宗馬さん(左端)

カピル・パーマー選手(左から3人目)、コキーラ選手(同2人目)と長尾宗馬さん(左端)。長尾さんは小学校から柔道を始め、履正社高から大阪高校総体に出場し個人3位入賞、摂南大柔道部で主将も務めた。大学3年時に外務省のスポーツ外交推進事業を通じてインドで柔道を教えた時の現地選手のハングリーさに感銘を受け、JICA海外協力隊でのインド派遣を希望。視聴覚障害者柔道代表チームへの指導に加え、道場での健常者への指導も行っている

23歳のパーマー選手は、身長が高く手足も長いため、遠くから足をかける払い腰が得意。20歳のコキーラ選手は、小柄で相手の懐に潜り込むような柔道スタイル。長尾さんは、選手の特徴や得意技を生かしたプレーができるように指導を行っています。

「初めて代表選手の練習を見た時、正直『これで世界大会に出られるの?』と思いました。そのくらい基本的な動作を分かっていなかったんです。技術面に加えて精神面も、基礎から教えていくしかないと思いました」

インドでは、健常者の柔道人口も国の人口比で考えると多くはなく、「空手と柔道がいっしょになっている感じ」で認知度は十分ではないと長尾さんは話します。障害者柔道の歴史も浅く、視聴覚障害者柔道協会も14年ほど前に立ち上げられたもの。レベルの高い指導者もいませんでした。そんな中で、長尾さんは根気よく基礎を繰り返し教えていきました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中