最新記事
スポーツ

【パリ五輪・パラリンピック】バヌアツの卓球選手とインドのパラ柔道選手をサポートする日本人コーチの存在?

2024年7月26日(金)12時00分
※JICAトピックスより転載
パリ五輪の競技場

(写真はイメージです)  kovop-Shutterstock

<バヌアツで唯一の卓球コーチである髙嶋諭史さんと、視覚障害者柔道でメダル獲得に期待がかかるインド人選手たちから信頼される長尾宗馬さん。パリ五輪・パラリンピックに挑む2人の協力隊コーチに、ここまでの軌跡と大会への想いを聞いた>

いよいよパリオリンピック・パラリンピックが開幕。世界のトップアスリートが出場するこの2つの大会に、JICA海外協力隊が指導する選手も出場します。バヌアツ、そしてインドから出場する選手のコーチを務める2人の隊員に、指導について、そして大会に向けた想いについて聞きました。

まずは初戦突破! バヌアツ卓球女子選手の16年ぶりの挑戦

オーストラリアの東約1,800キロに位置するバヌアツは、83の島々が南北約1,200キロにわたって広がる群島国です。このバヌアツから、33歳にして2008年の北京五輪以来16年ぶり2度目のオリンピック(五輪)出場を果たしたのは、卓球女子シングルスのプリシラ・トミー選手です。このトミー選手を指導し、五輪出場に導いたのが、JICA海外協力隊の髙嶋諭史さん。2023年4月からバヌアツに派遣され、同国のナショナルチームを指導しています。

プリシラ・トミー選手と髙嶋諭史さん

プリシラ・トミー選手と髙嶋諭史さん(左から)。髙嶋さんは、中学、高校、大学(筑波大学)を通じて卓球部に所属し選手として活躍。大学卒業後は国際交流基金派遣のスポーツ指導者などでUAE、バーレーンで計8年半指導。日本で会社勤めをして60歳で定年退職した後、JICA海外協力隊として2017〜2019年にジャマイカのナショナルチームのコーチ、2023年4月からバヌアツのナショナルチームのコーチを務める

トミー選手は、2023年11月に開催されたパシフィックゲームズ(4年に一度開催の、オセアニアの地域オリンピックの位置付け)で金メダルを獲得。続く2024年5月開催の五輪オセアニア予選でも4戦全勝の成績で優勝し、見事五輪出場を勝ち取りました。

こうしたトミー選手の活躍には、大会に向けて独自の練習プログラムを組み、他国選手の過去のプレー映像から分析したデータをもとに指導するなどの髙嶋さんの尽力がありました。

「自分のプレーを分析して修正する、卓球に対する頭の良さがある選手」。そう髙嶋さんが称えるトミー選手ですが、2012年と2016年の五輪には子育てなどのため、そして2020年の東京五輪にはコロナ禍のため、予選にも出場していませんでした。実は、83の島からなるバヌアツで、トミー選手は首都ポートビラがあるエファテ島から北に約400キロ離れた卓球台も無い島に住んでいます。コロナ禍もあり、2019年11月からは練習もできていない状況でした。パシフィックゲームズの2か月前からポートビラのいとこの家に滞在し、髙嶋さんと共に毎日練習に励んでそのブランクを埋めていきました。

「練習していなかったにも関わらずこれだけ戦えるのは、基礎がしっかりしているから。オセアニアでは珍しい守備型のカットマンで、手足が非常に大きいところも強みです。私が組んだ練習プログラムも忠実にこなす素直さがあるのも強さの一因だと思います」

ただ髙嶋さんは、バヌアツの卓球環境は決して良くはないと話します。「専用練習場はなく、卓球台が4台ある体育館でほかの競技と一緒に練習しています。その体育館も、昨年3月の二つの巨大サイクロンで窓や天井が被害を受け、雨風が入るような状況です」。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国務省を抜本再編、トランプ政権 無駄な部署廃止=

ワールド

中国外相、英・EUに多国間貿易体制擁護呼びかけ 米

ワールド

米、インド向けエネルギー・防衛装備の販売拡大を検討

ビジネス

ECB、近く物価目標達成も 不確実性高く政策予測困
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 4
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 5
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 6
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ペー…
  • 7
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 8
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 9
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 10
    なぜ? ケイティ・ペリーらの宇宙旅行に「でっち上…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中