ウクライナ「領土割譲やむなし」初の3割超でゼレンスキーに和平の選択肢
Ukrainian Support for Ceding Territory Surges
パリ五輪へ向けて出発するウクライナのボクシング選手(7月22日、キーウ) Ukrinform/Cover Images via Reuters Connect
<国民の大半が全領土回復を望んでいたときにはありえなかった外交上の余裕が生まれるという専門家も>
「和平と引き換えにロシアへ領土を割譲する」ことを支持するウクライナ人の割合が増えている。キーウ国際社会学研究所(KIIS)が実施した世論調査の結果だ。
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ウクライナもロシアも、和平交渉開始を受け入れるには程遠いように見える。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこれまで、ロシア現政権とのいかなる合意も拒否しており、とくにロシアのウラジーミル・プーチン大統領との停戦交渉は「不可能」とする法令に署名までしている。
しかしゼレンスキーは先週、11月に予定されている「平和サミット」にはロシア代表も出席すべきだ、と発言した。もしロシア政府に計画があり、「国連憲章に従って戦争を終わらせることに合意するなら、我々は話す用意がある」とゼレンスキーは言った。ニューズウィークは、同大統領の事務所にコメントを求めている。
ゼレンスキーは、「和平のために領土を割譲する用意がある」とは言っていない。アメリカなど同盟諸国も反対している。領土を与えることは、他国に侵攻したロシアに報酬を与えるのに等しいからだ。
だが、KIISによる最新調査は世論の変化を示唆している。KIISは、ロシアが本格侵攻を開始した2022年2月の直後からウクライナ人の意識調査を実施してきた。
開戦1年後は9割が反対
今回発表された世論調査によると、「和平を実現し、独立を維持する」ためには領土の割譲を受け入れる、と答えたウクライナ人は32%で、2024年2月の26%から増加した。2023年2月にはわずか9%だった。
「すべての領土を奪還するというウクライナ人のかつての士気は、疲労と犠牲の大きさのために低下しているのかもしれない」と、元ウクライナ軍人の防衛アナリスト、ヴィクトール・コヴァレンコは言う。「ウクライナ軍も反撃能力を欠き、もっぱら守りに徹している。西側諸国は揺るぎ支援を約束しているが、援助は一向に届かないようだ」
なお、今回の調査では、「戦争を終わらせるためにロシアに領土を割譲する」ことに依然として反対する者は、回答者の55%に上った。しかしこの数字も、2023年12月と比べれば減少している。当時は、人口の74%が割譲に反対だった。
回答者がウクライナのどこに住んでいるかによって、領土割譲に反対する度合いは異なる。反対が最も多かったのはロシアから遠い西部(60%)で、最も少なかったのはロシアに近く犠牲も大きい南部(46%)だった。
KIISによれば、世論調査の質問では、領土のどこが割譲対象になるかを特定していない。