銃弾・爆弾・賄賂の「地獄の配送業」...命がけでガザに食料運ぶ商人たち
「法と秩序の完全な崩壊」
昨年10月7日、ハマスがイスラエル南部の街を襲撃したことに端を発した今回の戦争では、イスラエル側が報復として空爆と地上侵攻を行い、ガザ地区に壊滅的な損害を与えた。230万人ものガザ住民のほとんどが住居を失い、彼らへの食料供給は、官僚主義と暴力のために八方塞がりとなっている。
食料を運び込むには主として2つの手段がある。1つは国際支援だ。主体は国連またはその関連機関によるコメや小麦粉、缶詰など保存食の供給で、戦時下での食料輸入の大半を占める。もう1つは民間による供給で、栄養不良を回避するために重要な生鮮食品が含まれる。
イスラエル軍は5月、イスラエル及びヨルダン川西岸地区からの商業的な食料供給の再開を認めた。エジプトからの入域経路として重要なガザ最南端ラファに対するイスラエル軍の攻撃により、国連による支援が大幅に減少したためだ。
ロイターはこうした商業的な食料供給の再開について既に報道した。その後、ガザの商業関係者がコスト高騰や混乱に悩まされ、ガザ地区内の市場や店舗向けに生鮮食品を輸入しようという試みが阻害されている状況についても、今回報道機関として初めて詳細に報じることになった。
食料トラックに対する攻撃は、5月7日にイスラエルがラファ攻撃を開始したことをきっかけで急増した。輸入業者や支援関係者によれば、この攻撃で、ラファでテント暮らしを送っていた150万人の避難民が散り散りになり、ガザ地区の混乱がさらに深まったという。
国連が提供する食料は、ケレム・シャロームや北部の越境地点を経由して今もガザに運び込まれている。だが、食料供給の調整に関与している支援関係者6人によれば、国連機関は武装ガードマンによる護衛の費用を出せないため、武装組織に対する脆弱性ははるかに高いという。ある関係者によれば、食料輸送トラックの約70%が攻撃を受けている。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長はロイターに対し、「トラック運転手は日常的に脅迫や襲撃を受けており、私たちは、法と秩序のほぼ完全な崩壊という事態に直面しているといえる」と語った。
「あまりにも多くのトラックが略奪された」
援助機関が困難に直面しているため、商業トラックがガザに運ぶ食料の割合は増え始めているものの、その流れは依然として不安定だと、関係者8人がロイターに語った。
彼らによると、ラファ攻撃が開始されて以来、民間ルートによる輸送は1日あたりトラック20台から100台で、1台あたり最大20トンの食料を運んでいるという。この間、イスラエル軍のデータによれば、1日平均150台の援助トラックと商業食料トラックが入国している。
これは、米国際開発庁が飢饉の脅威に対処するために必要とする1日600台のトラックにははるかに及ばない。
また、6人の援助関係者によれば、入ってくる市販の食料は高価で、援助国や援助団体により代金を支払い済みの国際援助の代わりにはならないという。
ノルウェー難民評議会のガザ担当のマジド・キシャウィ氏は、「いくつかの品目は、少なくとも15倍の値段になっている。基本的な品目は、援助や商用トラックの到着が激減したため、市場から姿を消した」と話した。
イスラエルのデモ隊
イスラエルやヨルダン川西岸で食料を積み、ガザの目的地まで届けるのは最大でも160キロの距離だが、その道のりは危険に満ちている。ガザに入る前から、トラブルに見舞われがちだという。
5月には、ガザに向かっていたトラックがイスラエルの抗議デモ隊に道を阻まれ、襲撃された。ドライバーにはイスラエル人のほか、イスラエルで働く許可を持つパレスチナ人だった。抗議者たちは、ハマスへの物資の供給を妨げる目的だと主張したが、一連の襲撃行動を受け、米政府はイスラエル人入植者らとつながりのあるグループに制裁を科した。
「特にイスラエルの運転手は、襲撃のせいで輸送料金を値上げした。1,000ドルの輸送費が3,000ドルになることもありる」と、サミールと名乗る輸送業者は話した。
ガザに入る前にトラックの大行列に引っ掛かり、長い待ち時間で輸入業者はトラック1台につき1日約200ドルから300ドルの負担を強いられている、と彼は付け加えた。