最新記事
パレスチナ

銃弾・爆弾・賄賂の「地獄の配送業」...命がけでガザに食料運ぶ商人たち

2024年7月9日(火)19時05分

パレスチナや欧米の政府関係者を含む関係者18人によれば、この遅れは、ガザへの食料輸送が全体的に滞っていることが原因だという。

輸入業者や援助関係者によると、6月初旬の2週間、イスラエル軍は人道援助物資の滞留を解消するためとして、すべての商業物資のガザ入りを停止した。ある輸入業者は、6月9日にイスラエル軍のガザへの物資搬入調整官から、商業貨物は「追って通知があるまで保留」だとするテキストメッセージを受け取ったという。

6月15日に始まるイスラム教の祝祭日の連休の頃には、商業トラックの通行が再開したという。


 

賄賂と護衛

ようやくガザに搬入された食料は別のトラックに積み替えられ、地元のドライバーによって域内の小売商に届けられるという。

そこは、戦闘地域だ。

ラファ攻撃開始以前は比較的安全と思われていたラファや南部の街ハンユニスの道路は、今では攻撃されやすい場所として知られている。

援助関係者3人はトラックの略奪は日常茶飯事だと言い、輸入業者のハムダさんは、ラファ侵攻前に比べて、略奪されるトラックの数は約6倍になったと推定している。

ハムダさんによれば、肉や新鮮な果物といった希少な食品を積んだトラックが狙われることもある。他の多くの場合、食品に紛れこませてタバコの密輸を手配したギャングに襲われている。

あるガザの商人は、スイカをくりぬいた中にタバコを隠して密輸している写真を共有したが、ロイターはその真偽を確認できなかった。

イスラエルが継続中の軍事作戦も、食料輸送の妨げとなっている

ある貿易商は、トラックがガザ内にいる間、リアルタイムで連絡できる軍関係者がいないと話した。戦闘や砲撃によって道路が閉鎖されている場合、安全な代替手段を見つけることも、仲間のドライバーにその情報を伝えることもできないという。携帯電話は圏外になることが多いためだ。

3人の貿易商は、広いコネを持ちイスラエル軍とも定期的に連絡を取るガザの商人に先月からカネを払い、貨物の搬入と目的地までのトラックの保護を得るようになったという。

3人はこの商人の名前は明かさなかったが、商品を安全に目的地まで運ぶのに、このサービスだけで1万4000ドルもかかるという。

輸入業者の一人であるアブ・モハメッドさんは、積み荷をいくらで売ることができるか、再計算しなければならなかったと語った。

「輸送費を補うために値上げすれば、数百ドルの儲けかもしれない。もしかしたら、収支が合うかもしれない。でもすべてを失うリスクもある。もし荷物が襲われたら、私の払ったカネは無駄になってしまう」



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241022issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年10月22日号(10月16日発売)は「米大統領選 決戦前夜の大逆転」特集。アメリカ大統領選を揺るがす「オクトーバー・サプライズ」 勝つのはハリスか? トランプか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

情報BOX:米大統領選、なぜ一部の激戦州が結果を左

ビジネス

連合、来年春闘で5%以上の賃上げ要求へ 芳野会長「

ワールド

ロシア、核ミサイル部隊の戦闘即応性を検証

ビジネス

アングル:25年春闘、4%台の着地か 賃上げモメン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選 決戦前夜の大逆転
特集:米大統領選 決戦前夜の大逆転
2024年10月22日号(10/16発売)

米大統領選を揺るがす「オクトーバー・サプライズ」。最後に勝つのはハリスか? トランプか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 2
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くその正体
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 5
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 6
    ナチス・ドイツの遺物が屋根裏部屋に眠っていた...そ…
  • 7
    シドニー・スウィーニーの最新SNS投稿が大反響! 可…
  • 8
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 9
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
  • 4
    『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思…
  • 5
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 6
    「メーガン・マークルのよう」...キャサリン妃の動画…
  • 7
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 8
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 9
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 10
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 8
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中