「なぜ日本が支援?」池上彰と考える、侵攻が続くウクライナと私たちのつながり
池上 ウクライナで日本語を学んで、それから日本に来て、将来やりたい夢をお持ちだったわけでしょう。戦争は、若い人たちの夢もまた奪うものだということですよね。
イーゴル そうですね。ただ、5年後、10年後の子どもたちの未来をつくる必要があります。前線に近い避難民用の施設を運営していますが、ショックなことにちゃんと読み書きできない子どもたちが出ています。コロナの影響で教育が受けられなくて、それでまた今回の侵略が始まって。
松永 子どもたちが教育の機会を逸してしまう。それは一生に影響を及ぼすことです。今、何百万人のウクライナの人々が国内外で避難していますが、それでも教育を受けることができるように、JICAは遠隔教育の機材を提供しています。将来復興の核になっていくのはウクライナの人々なので、特に子どもたちや若い人々に役に立つような支援を今後も続けていきたいと思っています。
助けるだけではなく、グローバル人材としての活躍の場を
イーゴル 私たちのNPOは日本国内のウクライナ避難民もサポートしていますが、ただサポートするだけではなくてグローバル人材に育てたいという目的があります。彼らをずっとサポートされる人ではなく、何か社会に貢献できる人にしたいのです。教育プロセスの中でカフェを作って、利益はウクライナのために寄付される、ウクライナ人はウクライナのために主体性を持って働ける、カフェやイベントでウクライナ文化も紹介できるという、いろいろなところにWin-Winな仕組みを作りました。
池上 「避難民だから」「かわいそうだから」と助けるだけではなくて、 グローバル人材として育てていくということなんですね。ウクライナの人にしてみても、単に助けてもらうのではなく自分たちがグローバル人材として活躍できた方がいい。そういう場を作っていくのが本当の支援なんだなと思います。
イーゴル JICAは、ノウハウの共有などでウクライナの基盤を支えるような、いろいろな取り組みを行なってくれています。ポーランドに避難するウクライナ人に向けたITスキルの研修を行うなど、グローバル人材に育てるための重要な役割も果たしていただいています。
松永 ITスキル研修もそうなのですが、JICAは日本とウクライナの双方向の関係を重要視して、ウクライナ避難民を受け入れる隣国のポーランドやモルドバなどの国と連携した協力を行っています。そして今JICAはウクライナに対して地雷除去の協力も行っていますが、これはカンボジアと連携した協力です。このように世界中にウクライナ支援の機運を作っていくということも、我々の支援の中の重要なポイントだと考えています。
池上 特にカンボジアではずっと内戦が続いてきて、大量の地雷が残っている。JICAは地雷除去やそのための人材育成の協力を地道に続けてきた。そのノウハウなどが、ウクライナでも役に立っている。そういう形の協力があるんだということですね。