最新記事
ウクライナ戦争

「なぜ日本が支援?」池上彰と考える、侵攻が続くウクライナと私たちのつながり

2024年7月10日(水)11時00分
※JICAトピックスより転載

newsweekjp_20240708074909.jpg

(左)JICAがポーランドで実施したITスキル研修の様子(右)JICAがカンボジアで実施したウクライナ政府職員への地雷除去研修の様子

「なぜ支援する?」それは日本と世界の平和、そして現代文明を守るため

池上 ウクライナを支援するというと、アメリカでも「ウクライナを支援するよりアメリカファーストだ」という声があります。日本はアメリカほど表立って出ないにしろ、「日本も財政が厳しいのに、なぜウクライナを支援するんだ」っていう声、ありますよね。

松永 そういう声は、日本やアメリカに限らず出てくると思います。ただ一方で忘れてはいけないのが、第二次世界大戦後、日本が戦後復興する時に世界銀行など世界から支援を受けたということです。東海道新幹線や高速道路、トヨタ自動車の工場の一部にも支援があったからこそ日本は復興してきた。また、2011年の東日本大震災の後には全世界から2000億円を超える寄付・支援をいただいているわけです。我々の今の日常、平和は、これまで危機が起きた時に世界のいろいろな国から支援されてきたおかげで成り立っていることを忘れてはいけないと思います。

イーゴル ロシアの侵略は、私たちが生きている平和な民主主義の社会、お互いを尊敬し合って共存できる社会を覆そうとしているんですね。ロシアが侵略に成功した場合、それはただ「ウクライナが負けた」ということではなく、他の国に対して力で現状変更ができるという悪しき前例となります。これはウクライナの問題だけではなくて、全世界の問題なのです。言葉が大きいかもしれませんが、現代文明の存続がかかっていると思っています。

池上 民主主義や戦後の今の私たちの大事な価値観を守るために、他国による一方的な侵略は国際社会全体で許してはいけない。その結果は日本にも影響を及ぼすんだということですね。


池上彰さんから皆さんへ
今、ウクライナのニュースは非常に少なくなっていますが、現地の悲惨な状況は続いています。もちろんJICAが支援していますけど、私たち一人ひとりがウクライナについて語ること、言葉に出すことも広い意味での支援活動になります。これをご覧になるみなさんには今改めて、「自分には何ができるのか」ということを自らに問いかけ、周りの人と話をするという時間を取っていただきたいですね。

(関連リンク)
JICAのウクライナでの取り組み(最新の支援事例の紹介も)
国際社会が直面する重要課題「ウクライナ支援」:日本、そしてJICAが果たす役割(G7特集)
「ウクライナの復興を担うのはITセクターだ」 強い使命感で成長を続けるスタートアップを後押し
日本の技術でウクライナの地雷除去へ!カンボジアで日本製の地雷探知機の研修を実施
ウクライナの正確・公平・公正な報道を守るため。機材提供で戦時下の公共放送局をサポート
JICAウクライナ事務所(Facebook)
NPO法人日本ウクライナ友好協会KRAIANY

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米アマゾン、来年から週5日出社義務化 「オフィス勤

ワールド

中・東欧の広範囲で豪雨、洪水で少なくとも17人死亡

ビジネス

UAW、ステランティスが不当労働行為と告発

ワールド

「TikTok禁止法」巡る訴訟で口頭弁論、運営側と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優雅でドラマチックな瞬間に注目
  • 2
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰だこれは」「撤去しろ」と批判殺到してしまう
  • 3
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将来の「和解は考えられない」と伝記作家が断言
  • 4
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 5
    バルト三国で、急速に強まるロシアの「侵攻」への警…
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    原作の「改変」が見事に成功したドラマ『SHOGUN 将軍…
  • 8
    広報戦略ミス?...霞んでしまったメーガン妃とヘンリ…
  • 9
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座…
  • 10
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 4
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 5
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 6
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 7
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 8
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 9
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 10
    33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...い…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すればいいのか?【最新研究】
  • 4
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 5
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 6
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 9
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 10
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中