ウクライナ戦争で「環境政策」の時計は30年も逆戻り...ロシア「もう一つの戦い」は敗色濃厚
aarrows/Shutterstock
<ロシアは劣勢に立たされている。ウクライナ戦争ではなく、地球温暖化との戦いで>
ただでさえ世界トップクラスの汚染国だったロシアは、2年以上に及ぶ戦争で環境政策をじわじわと後退させてきた。まず、西側諸国の制裁によって気候変動対策のプロジェクトが停滞した。脱炭素化の技術を欧米からの輸入に頼っていたためだ。
さらに、制裁で打撃を受けた自国の自動車産業を存続させるため、排出基準をかなり緩めることに。国内メーカーに対し、30年前レベルのEU基準に沿った車両生産を一時的に許可した。おかげで、排出ガスをまき散らす時代遅れの車が一時期生産された。
軍事分野でも、環境に直接的な悪影響が生じている。ウクライナからロシア領内へのドローン攻撃の可能性が高まるなか、各地方当局がドローンの使用を禁止。違法伐採や森林火災を発見できなくなった。また、戦車やミサイル、弾薬などの産業廃棄物も記録的な量に増加している。
そんな状況でもウラジーミル・プーチン大統領は、2060年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標を「維持する」と明言。こちらの戦いも後には引けなくなっているようだ。
2024年11月5日/12日号(10月29日発売)は「米大統領選と日本経済」特集。トランプvsハリスの結果で日本の金利・為替・景気はここまで変わる[PLUS]日本政治と迷走の経済政策
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら