最新記事
フランス総選挙

選挙で台頭の極右政党に、サッカー仏代表の主力黒人選手が反攻──エムバペ、テュラムも

France's Star Athletes Refuse to 'Stick to Sports' Ahead of Elections

2024年6月20日(木)18時36分
ジーザス・メサ

有色人種が多いフランス代表を「フランスらしくない」と批判してきた極右政党が総選挙で与党を上回りそうな勢いにエムバペらは抵抗を訴えるが(6月17日、EURO初戦を戦った独デュッセルドルフで)  Photo by Andrzej Iwanczuk/NurPhoto

<ルペン率いる国民連合の大躍進に危機感を覚え、若年層に投票を呼びかける>

解散総選挙という危険な賭けに打って出たエマニュエル・マクロン仏大統領は思いがけない援軍を得た。サッカーのフランス代表チームだ。6月30日に行われる第1回投票では「極右」を勝たせるなと、スター選手が続々と若い有権者に訴えている。

【動画】メッシの「エスコートキッズ」を務めるキム・カーダシアンの息子セイント...手をつないで入場するシーン

ドイツ各地で開催中のサッカー欧州選手権「ユーロ2024」の記者会見の場で、仏代表チームのフォワードで黒人の、マルクス・テュラムは、欧州議会選挙で圧勝した極右政党が国政選挙でも優勢になるのを防ぐため、「日々闘う」よう同胞に訴えた。

 

「今の状況は悲しいと思う」マリーヌ・ルペン率いる「国民連合」が勝つ可能性を聞かれて、テュラムはそう答えた。「これが僕らの社会の悲しい現実だ。投票に行くよう全ての人に呼びかけよう。国民連合が再び勝つことがないよう、みんなで日々闘う必要がある」

フランス代表チームのキャプテンを務め、世界トップクラスのサッカー選手と広く評価されているキリアン・エムバペ(25)も同調し、「極端な勢力」に対して抵抗の1票を投じてほしいと若者に訴えた。

代表チームは多様性のシンボル

「極端な勢力が権力の座を勝ち取ろうとしているのは誰の目にも明らかだ」と、エムバペは訴えた。「そして我々は、この国の未来を選ぼうとしている」

エムバペは特定の政治家を名指しはしなかったが、ルペン率いる国民連合はこの発言を聞き逃さず、サッカー選手が政治に口を出すのは筋違いだと、がなり立てた。

「フランス代表チームのジャージを着る栄誉を誇りに思うなら、少しは節度をわきまえ、態度でそれを示すがいい」と、国民連合のセバスチャン・シェヌー副議長は吐き捨てた。

だが、アメリ・ウデアカステラ仏スポーツ相は、エムバペを擁護して言った。「国の未来が掛かった、全く前例のない、この決定的に重要な局面で、彼は若い世代に呼びかけようとしたのだ」

サッカーのフランス代表チームはさまざまなルーツを持つ選手で構成され、以前からフランスの多様性を示すシンボル的存在だった。それに対して、極右は「フランスらしくない」と不満を露わにしてきた。

ユーロ2024の代表チームに選ばれた26人(監督も含む)には黒人選手も数人いるし、アラブ系のルーツを持つ選手もいることが気に入らないのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米インフレ鈍化示す一段のデータ必要、利下げ前に=F

ワールド

OPEC産油量、6月は前月比日量7万バレル増=ロイ

ビジネス

米テスラ、第2四半期納入台数は予想上回る 値下げな

ワールド

NATO、ウクライナ防空で進展の公算 来週の首脳会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVの実力
特集:中国EVの実力
2024年7月 9日号(7/ 2発売)

欧米の包囲網と販売減速に直面した「進撃の中華EV」のリアルな現在地

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    H3ロケット3号機打ち上げ成功、「だいち4号」にかかる防災への期待...「攻めの姿勢」で世界に示した技術力の優位性
  • 2
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「帰ってきた白の王妃」とは?
  • 3
    自宅で絶叫...ウガンダから帰国した旅行者がはるばる連れ帰ってきてしまった「恐ろしいお土産」とは?
  • 4
    5つの独立運動に包囲された中国に「スイスモデル」と…
  • 5
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド…
  • 6
    ウクライナ戦闘機、ロシア防空システムを「無効化」.…
  • 7
    テイラー・スウィフトに経済効果なし?...「スウィフ…
  • 8
    能登半島地震から半年、メディアが伝えない被災者た…
  • 9
    討論会惨敗の米民主党がここから「仮病」で大統領選…
  • 10
    ありなの? 飛行機の隣席に40kgの大型犬アメリカン…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「帰ってきた白の王妃」とは?
  • 3
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地...2枚の衛星画像が示す「シャヘド136」発射拠点の被害規模
  • 4
    ウクライナ戦闘機、ロシア防空システムを「無効化」.…
  • 5
    ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオス…
  • 6
    ミラノ五輪狙う韓国女子フィギュアのイ・ヘイン、セク…
  • 7
    「大丈夫」...アン王女の容態について、夫ローレンス…
  • 8
    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着た…
  • 9
    衛星画像で発見された米海軍の極秘潜水艇「マンタレ…
  • 10
    ロシア軍部隊を引き裂く無差別兵器...米軍供与のハイ…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に
  • 3
    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア
  • 4
    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…
  • 5
    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 6
    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は…
  • 7
    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…
  • 8
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 9
    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…
  • 10
    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中