フィンランドが「世界一幸福な国」でいられる本当の理由...国民の安全を守る「国防」の現実
ストゥブ大統領が語った「世界一幸せな国」フィンランドの現実(写真はすべて筆者撮影)
<約1300キロにわたってロシアと国境を接するフィンランドの「国防」に対する意識の高さを、ストゥブ大統領がアジアメディアとは初となるインタビューで語った>
北欧のフィンランドと言えば、何をイメージするだろうか。
サウナ、オーロラ、サンタクロース、トナカイ、キシリトール、ムーミン──どれもフィンランドの名物であり、日本人にも馴染みのあるものが少なくない。
そんなフィンランドは、毎年のように、数々の世界的なランキングで上位に名を連ねている。国連が発表している「世界幸福度ランキング」では、2018年から7年連続で第1位を獲得。社会の安定感や信頼感、透明性、自由度などが評価され、世界で最も幸せな国に選ばれている。
そのほかにも、「SDGs達成度」が世界1位、「メディアリテラシー指数」も世界1位、「欧州デジタル経済社会指数」も1位、世界131カ国のイノベーション能力を測るグローバル・イノベーション・インデックスの「ビジネス環境」で4年連続の1位を獲得している。さらに、「腐敗が最も少ない国ランキング」で世界3位、国際報告書で「男女の格差が少ない国」は世界2位、「男女平等ランキング」も世界3位、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)の国際比較では世界3位となっている。
多くの指標で世界1位となるフィンランドの幸福度を支えるもの
とにかく、国民の国に対する満足度も高いことがわかる。ただ、なぜ幸福度が高いのだろうか。世界幸福度ランキングで50位にも入らない日本(2024年は51位だった)に暮らす者として、国民が世界で一番、幸福に感じているという国の秘密を知りたくなった筆者は、フィンランドに飛んだ。
今回、フィンランドは初の訪問だったが、そこで目にしたのは、「幸福」という言葉から想像しにくい意外な現実だった。実は、フィンランドが安定した国で、国民に満足感を与えている大きな理由のひとつには、「国防意識」の高さがあったのである。
フィンランドは2023年4月に、欧州の軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)に加盟した。その背景には、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻がある。ロシアと約1300キロの国境を分けるフィンランドの国民が、ロシアの強引な軍事侵攻に対して危機感を覚えたことは言うまでもない。
事実、ロシアのウクライナ侵攻後、国民の90%がNATOへの加入に賛成し、NATOの作戦にフィンランド軍を送ってもいいと答えている。さらにフィンランド国民の98%は自分の国を守りたいと答えており、この割合は世界でも3位に高く、欧州では最も高いという。NATO加盟に支持が高いのは、国民が安心や幸せを感じるのに、国を守る必要があると考えたからに他ならない。