最新記事
南ア

「マンデラの時代」に幕...1994年以来初の過半数割れ、ANCの「歴史的敗北」で南アはどうなる?

ANC Dominance Ends

2024年6月11日(火)16時57分
ノスモット・バダモシ
ラマポーザ大統領

敗北の責任を問われる可能性も出てきたラマポーザ大統領 ALET PRETORIUSーREUTERS

<5月末の総選挙で単独過半数を維持できなかった与党・アフリカ民族会議(ANC)。「誰とでも連立を組む用意がある」と語るが、野党との足並みは揃わない>

まずは予想どおりの展開だった。5月末の南アフリカ総選挙で、与党・アフリカ民族会議(ANC)は単独過半数を維持できなかった。全人種参加型の選挙が始まった1994年以来、初めてのことだ。

屈辱的な事態だが、前大統領ジェイコブ・ズマが半年前に立ち上げた新党・民族の槍(MK)に黒人票を食われた結果と言えよう。

ANCの得票率は公式発表で40.2%(前回2019年は57.5%)、獲得議席数は159(同230)にとどまり、国民議会(定数400)の過半数を初めて割り込んだ。

第2党は白人系で中道右派の民主同盟(DA)で、得票率21.8%(87議席)。ズマ新党のMKは14.6%(58議席)、やはりANC分派の経済自由の戦士(EFF)は9.5%(39議席)だった。

ANCのフィキレ・ムバルラ幹事長は6月2日の会見で、「確かに痛手だが、負けたわけではない」と主張し、今後は誰とでも連立を組む用意があると語った。

では、いかなる連立か。最も単純なのは第2党のDAと組むことだが、白人系のDAと組むことにはANC内部の反発が強い。一方のDA側も、雇用における黒人優遇措置の継続や公的医療保険の導入は受け入れ難い。

閣外協力で少数政権か

第4党で左派のEFFは、DAを少数派(白人)の味方と決め付けている。党首のジュリアス・マレマに言わせれば、もしもDAと連立を組めば南アフリカは「白人至上主義の天下」となり、ANCは「白人帝国主義の政策を推進する傀儡政権」に成り下がる。

ただし現実のDAは黒人や有色人種の一部からも支持されており、現に西ケープ州やその州都ケープタウンでは第1党として政権を担っている。またANCとの連立には前向きだが、MKやEFFの政権参加には拒否反応を示す。

そうなると、考えられるのはANCとDA、そしてクワズールー・ナタール州を地盤とするインカタ自由党(IFP)の連立だ。

なおEFFが政権に加われば中国やロシアの影響力が強まる可能性が高く、アメリカ政府は難色を示している。同党は主要産業の国営化や白人所有地の没収も主張しているからだ。

またMKは連立協議の前提として現職シリル・ラマポーザ大統領の辞任を要求しているが、ANCがこれに応じる可能性は低い。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中