自主的カーボンクレジット市場の再定義...バイデン政権の新ガイドライン
Can Carbon Offsets Get Real Climate Results? Feds Set New Market Guidelines
(写真はイメージです) Dan Meyers-Unsplash
<イエレン財務長官が、グリーンウォッシュ批判に対応するための自主的カーボンクレジット市場の新基準を発表>
カーボンオフセットのリセットボタンを押すようなものかもしれない。アメリカのジャネット・イエレン財務長官などバイデン政権高官が5月28日、自主的カーボンクレジット市場に関するガイドラインを発表した。二酸化炭素(CO2)排出削減に資金を誘導する多大な可能性を秘めていながら、これまでのところ真の気候変動対策には到底結びつかない市場の是正を目指す。
「我々はこの市場を成功させたい」。イエレンは米首都ワシントンで5月28日に開かれた会合で力説した。「だがそのためには幅広い真摯な取り組みが求められる」
企業や気候政策の専門家、活動家は長年の間、カーボンオフセットのクレジットというアイデアをめぐり苦慮してきた。理論的には、気候変動対策への貢献を望みながら温室効果ガスの排出を大幅に削減できない企業は、大気中のCO2を減らす別の活動の資金を拠出することで、クレジットを受け取ることができる。その企業は対価としてのクレジットを獲得でき、森林保護や環境に優しい農業、新しい再生可能エネルギーといったプロジェクトは必要な資金を調達できる。
だが現実には、自主的カーボンクレジット市場は真の排出削減にはほど遠く、グリーンウォッシュ(見せかけだけの環境配慮)の批判がつきまとう。非営利の監視団体やジャーナリストの調査では、排出削減の成果をほとんど達成できなかったプロジェクトの存在が明るみに出た。専門家の調査によれば、カーボン市場が支援した取り組みの中には、計画性の乏しい植林など、害の方が大きいプロジェクトもある。
米国家気候アドバイザーのアリ・ザイディは財務省の会合で「懐疑的な見方が多いのはそれなりの理由がある」と発言。企業はまず、自社の業務やサプライチェーンをまたいで達成できる排出削減に力を入れ、その上で取り組み強化のためにカーボン市場を利用すべきだと提言した。
「これを減速の口実としてではなく、加速のチャンスとして利用しなければならない」(ザイディ)
イエレンはこの考え方を財務省のガイドラインの主要3原則に取り入れた。企業はまず、自社の排出削減を優先する必要がある。
第2に市場運営の誠実性が求められるとイエレンは述べ、クレジットがどう機能するのか、排出削減の達成に対して価格をどう設定するのかに関して透明性を高める必要があるとした。
第3に、排出削減の主張は真実でなければならない。イエレンによると、クレジットの対象とするためにはCO2排出の回避や抑止を確認する必要があり、削減は持続可能かつ追加的でなければならない。つまり、カーボンクレジットによる資金提供がなければ問題のプロジェクトは実現していなかったことを確認する必要がある。