習近平はプーチンの足元を見て、天然ガスを半値で買い叩いている
Xi Squeezes Putin for Deeper Gas Discounts
ミロフは5月、アメリカのシンクタンク、アトランティック・カウンシル向けにレポートを作成した。西シベリアのガス田と、ヨーロッパ市場の代わりとなるアジア市場を結ぶインフラが存在しないため、ガスプロムのアップストリーム(上流部門)にあたるガス生産拠点が孤立している現状を解説する内容だった。
ミロフのレポートはほかにも、ガスプロムが、パイプラインに代わるエネルギー資源の供給ルートとなる液化天然ガス(LNG)プラントを建設し損なっていることも指摘している。
5月には、石油や発電関連事業も含めたガスプロム・グループ全体で、最終損益が6290億ルーブル(約1兆600億円)の赤字になったと発表された。ミロフによればこの数字は、「中国へのガス輸出が損失を出していることを示すいちばんの証拠」だという。
「(ロシアの)ガスの大半は、地理的・経済的にヨーロッパ圏に属する地域で生産されている。ゆえに、ガスプロムにとって合理的な唯一のビジネスモデルは、これまで通り、ヨーロッパ市場に独占的にガスを供給者することだった」とミロフは指摘する。
唯一の市場を敵に回したプーチン
「ロシア産ガスのヨーロッパ向け供給が大幅に復活することは、まずあり得ない」とミロフは指摘し、さらにこう続けた。「政治的な理由から供給が断たれた以上、今後復活する見通しは全くないように見受けられる。また、代替となるモデルも存在しない」
フィナンシャル・タイムズ紙の報道によれば、中国は既に、ロシア産ガスに対しては、他の供給国と比べて低い価格しか支払っていないという。その平均価格は100万BTU(英国熱量単位)あたり4.4ドルで、ヨーロッパ向けの100万BTUあたり10ドルという価格と比べると半額以下だ。
同紙はまた、前述した「シベリアの力2」パイプラインに関する契約は、5月の首脳会談でプーチンが習に対して行なった3つの要求の1つだったと報じている。さらにこの記事では、今回のプーチンによる中国公式訪問に、ガスプロムのアレクセイ・ミレル最高経営責任者(CEO)が同行していなかったことは、これまでの中国政府との交渉において同CEOが不可欠な役割を果たしていたことを考えると特筆すべき点だと指摘している。
中国の輸入ガスに対する需要は、2023年には天然ガス換算で1700億立方メートルだったが、2030年までに2500億立方メートルに達する可能性もあると予測されている。この予測を行なったコロンビア大学世界エネルギー政策センターによると、この量は、既存のパイプライン供給契約とLNGによって大半がまかなえるものだという。
(翻訳:ガリレオ)
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