「信じ難いほど不人気...」ガザ戦争で逆風のバイデン、再選のカギ握るのは「激戦州の少数派」
BIDEN’S BATTLEGROUND ELECTION
草の根団体「ミリオン・ムスリム・ボーツ」によると、全米のイスラム教徒のうち前回の大統領選に投票した人は150万人で、投票率は71%だった。
今回の選挙でこの割合がさほど低下しなくても、ミシガン州などの激戦州ではトランプが有利になる可能性があると、民主党の戦略担当者らは警戒している。
イスラエルのガザ侵攻でバイデンは「アラブ系の票を当てにできなくなったと思う」と、前回の大統領選でバイデン陣営の世論調査を担当したセリンダ・レイクは本誌に語った。
情報源が異なる若者と高齢者
バイデンの中東政策に怒っているのはアラブ系だけではない。全米各地の大学で抗議の声が広がり、人種、民族、宗教を問わず、左派の若者の「バイデン離れ」が加速している。
イスラエルのガザ侵攻をジェノサイド(集団虐殺)と見なす10代~30代のリベラル派は、今こそ立ち上がらなければと思っていると、USCPRを率いるアブズネイドは話す。バイデンのイスラエル寄り姿勢は「若者や非白人には信じ難いほど不人気だ」というのだ。
イスラエルのガザ侵攻に対するアメリカ人の見方は年代によって大きく異なる。
アラブ・アメリカ研究所の今年1月の調査では、アメリカ人全体ではパレスチナ寄りの人は19%にすぎなかったが、18~29歳では37%を占めた。ギャラップの今年3月の調査では、イスラエルに好意的なアメリカ人は55歳以上では71%に上るが、18~34歳では38%だった。
バイデン勝利の鍵を握るのは比較的若い世代だ。バイデンは前回、若者と非白人の支持を取り付けてトランプを下した。出口調査ではバイデンは18~24歳の票をトランプより24ポイント多く獲得。黒人とラティーノ(中南米系)の若者に絞れば、さらに大きな差をつけた。
ガザの抗議デモはあらゆる経歴の若者たちのもっと広範な不満も反映していると専門家は指摘する。バイデン政権はイスラエルへの軍事援助などに巨費を投じるのではなく、学生ローンや住宅問題などアメリカ国内の問題に取り組むべきだと若い世代は考えている。
もちろん、若者がアメリカの外交政策に不満を抱くのはこれが初めてではない。現在の抗議活動はイラク戦争とベトナム戦争に反対する抗議活動が2004年と1968年の大統領選を特徴付けたのと比較される。
だが今回の選挙の特徴は、この2回と違って米軍部隊が中東やヨーロッパで地上戦を繰り広げていないことだけではないと専門家は指摘する。