最新記事
米大統領選

「信じ難いほど不人気...」ガザ戦争で逆風のバイデン、再選のカギ握るのは「激戦州の少数派」

BIDEN’S BATTLEGROUND ELECTION

2024年6月5日(水)10時43分
ダニエル・ブッシュ(本誌ホワイトハウス担当)

民主党全国大会の会場前で行われた反戦集会でベトナム戦争に抗議する人々

1968年にはベトナム反戦の嵐が吹き荒れた。(写真)民主党全国大会の会場前で行われた反戦集会でベトナム戦争に抗議する人々 SANTI VISALLI/GETTY IMAGES

草の根団体「ミリオン・ムスリム・ボーツ」によると、全米のイスラム教徒のうち前回の大統領選に投票した人は150万人で、投票率は71%だった。

今回の選挙でこの割合がさほど低下しなくても、ミシガン州などの激戦州ではトランプが有利になる可能性があると、民主党の戦略担当者らは警戒している。

イスラエルのガザ侵攻でバイデンは「アラブ系の票を当てにできなくなったと思う」と、前回の大統領選でバイデン陣営の世論調査を担当したセリンダ・レイクは本誌に語った。

情報源が異なる若者と高齢者

バイデンの中東政策に怒っているのはアラブ系だけではない。全米各地の大学で抗議の声が広がり、人種、民族、宗教を問わず、左派の若者の「バイデン離れ」が加速している。

イスラエルのガザ侵攻をジェノサイド(集団虐殺)と見なす10代~30代のリベラル派は、今こそ立ち上がらなければと思っていると、USCPRを率いるアブズネイドは話す。バイデンのイスラエル寄り姿勢は「若者や非白人には信じ難いほど不人気だ」というのだ。

イスラエルのガザ侵攻に対するアメリカ人の見方は年代によって大きく異なる。

アラブ・アメリカ研究所の今年1月の調査では、アメリカ人全体ではパレスチナ寄りの人は19%にすぎなかったが、18~29歳では37%を占めた。ギャラップの今年3月の調査では、イスラエルに好意的なアメリカ人は55歳以上では71%に上るが、18~34歳では38%だった。

バイデン勝利の鍵を握るのは比較的若い世代だ。バイデンは前回、若者と非白人の支持を取り付けてトランプを下した。出口調査ではバイデンは18~24歳の票をトランプより24ポイント多く獲得。黒人とラティーノ(中南米系)の若者に絞れば、さらに大きな差をつけた。

ガザの抗議デモはあらゆる経歴の若者たちのもっと広範な不満も反映していると専門家は指摘する。バイデン政権はイスラエルへの軍事援助などに巨費を投じるのではなく、学生ローンや住宅問題などアメリカ国内の問題に取り組むべきだと若い世代は考えている。

もちろん、若者がアメリカの外交政策に不満を抱くのはこれが初めてではない。現在の抗議活動はイラク戦争とベトナム戦争に反対する抗議活動が2004年と1968年の大統領選を特徴付けたのと比較される。

だが今回の選挙の特徴は、この2回と違って米軍部隊が中東やヨーロッパで地上戦を繰り広げていないことだけではないと専門家は指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン氏、選挙戦継続を強調 認知力検査の受診には

ワールド

アングル:インド経済最大のリスクは「水」、高成長の

ワールド

アングル:忍び寄る「ヒトからヒト」へ、科学者が恐れ

ワールド

英スターマー新首相、組閣に着手 女性初の財務相にリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVの実力
特集:中国EVの実力
2024年7月 9日号(7/ 2発売)

欧米の包囲網と販売減速に直面した「進撃の中華EV」のリアルな現在地

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 2
    携帯契約での「読み取り義務化」は、マイナンバーカードの「基本概念」を根本的にひっくり返す悪手だ
  • 3
    「黒焦げにした」ロシアの軍用車10数両をウクライナ部隊が爆破...ドローン攻撃の「決定的瞬間」が公開される
  • 4
    「下手な女優」役でナタリー・ポートマンに勝てる者…
  • 5
    「天井に人が刺さった」「垂直に落ちた」── 再び起き…
  • 6
    和歌山カレー事件は冤罪か?『マミー』を観れば死刑…
  • 7
    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…
  • 8
    観光客向け「ギャングツアー」まであるロサンゼルス.…
  • 9
    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…
  • 10
    一期一会を演出する「奇跡」の人気店は数年で潰れる.…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 3
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「帰ってきた白の王妃」とは?
  • 4
    携帯契約での「読み取り義務化」は、マイナンバーカ…
  • 5
    ウクライナ戦闘機、ロシア防空システムを「無効化」.…
  • 6
    黒海艦隊撃破の拠点になったズミイヌイ島(スネーク…
  • 7
    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着た…
  • 8
    H3ロケット3号機打ち上げ成功、「だいち4号」にかか…
  • 9
    キャサリン妃も着用したティアラをソフィー妃も...「…
  • 10
    「地球温暖化を最も恐れているのは中国国民」と欧州…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 3
    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア
  • 4
    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 5
    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は…
  • 6
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 7
    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…
  • 8
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地.…
  • 9
    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…
  • 10
    「何様のつもり?」 ウクライナ選手の握手拒否にロシ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中