最新記事
米大統領選

「信じ難いほど不人気...」ガザ戦争で逆風のバイデン、再選のカギ握るのは「激戦州の少数派」

BIDEN’S BATTLEGROUND ELECTION

2024年6月5日(水)10時43分
ダニエル・ブッシュ(本誌ホワイトハウス担当)

ニューヨークの裁判所に出廷したドナルド・トランプ

4件の刑事訴訟を抱えつつ、再選を目指すトランプ(5月、ニューヨーク市の裁判所で) SETH WENIGーPOOLーREUTERS

激戦州で鍵を握るアラブ系

外交実績を比べれば、有権者はトランプではなくバイデンを選ぶはずだと、ラットバクは主張する。「何十年にも及ぶ外交経験や、同盟国との深い信頼関係を考慮すれば、今まさに国際舞台においてアメリカが必要としている指導者はジョー・バイデンにほかならない」というのだ。

「それに比べトランプは、アメリカを北朝鮮との核戦争に導きかねないような発言をツイッター(現X)で重ね、ウラジーミル・プーチンら独裁者をたたえて世界におけるアメリカの指導力を衰退させた」と、ラットバックは述べ、もしトランプが再選したら、1期目よりも「もっと事態は悪化するだろう」と警告した。

ガザの戦闘がアメリカの国内政治に及ぼした副次的な影響で、選挙ウォッチャーはアラブ系とイスラム教徒のアメリカ人に注目するようになった。

この2つの集団はかなりの部分重なり合っている。アメリカの人口に占めるその割合は小さいが、この層の票は重要な激戦州の選挙結果を大きく左右する可能性がある。

20年の国勢調査によると、中東または北アフリカにルーツを持つアメリカ在住者は350万人。この調査は宗教については調べていないが、ピュー・リサーチセンターの17年の調査では、アメリカ在住のイスラム教徒は340万人で、50年までに倍増する見込みだ。

今年4月に発表されたピューの別の調査では、アメリカ在住のイスラム教徒の66%が民主党または左派寄りの第3政党を支持すると答えていた。彼らは数の上では小さな集団だが、ミシガン州などの激戦州に固まって住んでいて、州規模の重要な選挙の結果に大きな影響を与える。

全米各州のうち、州人口に占めるアラブ系が最も多いのはミシガン州だ(アラブ・アメリカ研究所調べ)。前回の大統領選で、同州ではバイデンがトランプに15万4000票余りの僅差で勝った。この時、同州で有権者登録をしたイスラム教徒は20万6050人。

同州で今年2月に行われた大統領選の民主党予備選では、イスラエルを支持するバイデンに抗議の意思を示すため、「支持者なし」と投票した人が10万人を上回った。

ミシガン州だけではない。やはり激戦州のウィスコンシン州とペンシルベニア州でも、アラブ系とイスラム教徒の人口は前回の大統領選でバイデンがトランプよりわずかに多く獲得した票数を上回っている。

ウィスコンシン州では前回の大統領選でバイデンは2万票の差でトランプに勝ったのだが、同州で今年4月に行われた民主党予備選では、およそ4万8000人の有権者がバイデンの中東政策に抗議するため「党の指示に縛られない選挙人」に投票した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ野党指導者マチャド氏、ノーベル平和賞授賞

ワールド

チェコ、新首相にバビシュ氏 反EUのポピュリスト

ビジネス

米ファンドのエリオット、豊田織株5.01%保有 「

ワールド

タイ・カンボジア紛争、トランプ氏が停戦復活へ電話す
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 5
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 6
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中