最新記事
米大統領選

「信じ難いほど不人気...」ガザ戦争で逆風のバイデン、再選のカギ握るのは「激戦州の少数派」

BIDEN’S BATTLEGROUND ELECTION

2024年6月5日(水)10時43分
ダニエル・ブッシュ(本誌ホワイトハウス担当)

イラク侵攻直前の米英駐留部隊

イラク侵攻直前の米英駐留部隊(03年)。戦争は米大統領選を左右してきた SCOTT NELSON/GETTY IMAGES

投票日までには、さまざまな状況の変化が起きる可能性もある。

バイデンは戦争の長期化に伴い、イスラエルへの批判を強めている。5月8日には、イスラエルのガザ南部ラファへの大規模侵攻計画に対し一部の武器の供与を停止するとの決断も下した。こうした対応には、有権者のバイデン離れを食い止める効果があるかもしれない。

イスラエルとイスラム組織ハマスが停戦合意してガザでの流血に終止符を打つ可能性もある。4月に米連邦議会が軍事支援再開を承認したことでウクライナは勢いを取り戻すかもしれない(民主党支持者の多くはウクライナ支援を支持している)。

だがガザでの戦争に終わりが見えず、中東問題が大きく報じられる状況が続く可能性もある。そうなればバイデンは8月の民主党全国大会まで世論の反発への対応に追われ続けるだろう。

ちなみに68年の党全国大会(くしくも開催場所は今年と同じイリノイ州シカゴだった)では、反戦を叫ぶデモ隊と警察が衝突した。

「現時点では(勝つか負けるか)ぎりぎりの状況であり、バイデンに票の取りこぼしは許されない」と、ハーバード大学ケネディ政治学大学院のトーマス・パターソン教授(政治学)は本誌に語った。

「第2次大戦後のアメリカの選挙で外交政策が大きな役割を果たしたのは、状況が芳しくないときだけだ」とパターソンは言う。そしてガザ問題において「バイデンは勝ち目のない状況に自分を追い込んでいる」。

同時多発テロ後、ブッシュ政権は対テロ戦争を始め、共和党は新自由主義(ネオリベラリズム)的な外交政策に走った。それを尻目に民主党は、アラブ系やイスラム教徒を支持層に取り込んできた。

だがイスラエルへの軍事支援は、そうした支持層の民主党離れを一部で引き起こしていると専門家らは指摘する。この問題が「アラブ系アメリカ人有権者に大きな影響を与えることは現時点では間違いない」と、アラブ・アメリカ研究所のジェームズ・ゾグビー所長は語った。

本誌がバイデン陣営にコメントを求めたところ、ガザ問題でのバイデンの対応を擁護する回答が届いた。

「大統領は中東において暴力を終わらせ、公正かつ恒久的な平和を実現するという目的を(人々と)共有し、その目的のために日々奮闘している」と、バイデン陣営の広報を担当するチャールズ・ラットバクは本誌の問い合わせに書面で回答した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中