「信じ難いほど不人気...」ガザ戦争で逆風のバイデン、再選のカギ握るのは「激戦州の少数派」
BIDEN’S BATTLEGROUND ELECTION
投票日までには、さまざまな状況の変化が起きる可能性もある。
バイデンは戦争の長期化に伴い、イスラエルへの批判を強めている。5月8日には、イスラエルのガザ南部ラファへの大規模侵攻計画に対し一部の武器の供与を停止するとの決断も下した。こうした対応には、有権者のバイデン離れを食い止める効果があるかもしれない。
イスラエルとイスラム組織ハマスが停戦合意してガザでの流血に終止符を打つ可能性もある。4月に米連邦議会が軍事支援再開を承認したことでウクライナは勢いを取り戻すかもしれない(民主党支持者の多くはウクライナ支援を支持している)。
だがガザでの戦争に終わりが見えず、中東問題が大きく報じられる状況が続く可能性もある。そうなればバイデンは8月の民主党全国大会まで世論の反発への対応に追われ続けるだろう。
ちなみに68年の党全国大会(くしくも開催場所は今年と同じイリノイ州シカゴだった)では、反戦を叫ぶデモ隊と警察が衝突した。
「現時点では(勝つか負けるか)ぎりぎりの状況であり、バイデンに票の取りこぼしは許されない」と、ハーバード大学ケネディ政治学大学院のトーマス・パターソン教授(政治学)は本誌に語った。
「第2次大戦後のアメリカの選挙で外交政策が大きな役割を果たしたのは、状況が芳しくないときだけだ」とパターソンは言う。そしてガザ問題において「バイデンは勝ち目のない状況に自分を追い込んでいる」。
同時多発テロ後、ブッシュ政権は対テロ戦争を始め、共和党は新自由主義(ネオリベラリズム)的な外交政策に走った。それを尻目に民主党は、アラブ系やイスラム教徒を支持層に取り込んできた。
だがイスラエルへの軍事支援は、そうした支持層の民主党離れを一部で引き起こしていると専門家らは指摘する。この問題が「アラブ系アメリカ人有権者に大きな影響を与えることは現時点では間違いない」と、アラブ・アメリカ研究所のジェームズ・ゾグビー所長は語った。
本誌がバイデン陣営にコメントを求めたところ、ガザ問題でのバイデンの対応を擁護する回答が届いた。
「大統領は中東において暴力を終わらせ、公正かつ恒久的な平和を実現するという目的を(人々と)共有し、その目的のために日々奮闘している」と、バイデン陣営の広報を担当するチャールズ・ラットバクは本誌の問い合わせに書面で回答した。