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国公立大学の学費増を家庭に求めるのは筋違い

2024年5月22日(水)11時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

大学間の公平な競争環境を作るため、国公立の学費を上げるというのは、1970年代の「国立と私立の学費格差が大きすぎるので、前者の学費を上げる」という論理を彷彿させる。これにより引き上げられた国立大学の学費は、今でも十分に高い水準にある。国立と私立の格差が問題と言うなら、後者の学費を下げたほうがいい。

日本の政府の教育費支出は少なく、GDPに占める割合は国際的に見て毎年最低レベルだ(2023年は3.0%)。その結果、大学教育費用の6割を個々の家計が負担する構造になっている。これが特異であるのは、<図1>を見れば分かる。

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国がカネを出さず、個々の家計の負担が大きい日本は左上にあり、その逆の北欧諸国は右下にある。これらの国では、高等教育費用の大半が公費で賄われている。周知のように、大学の学費もほぼ無償だ。

高度な人材を育成するにはお金がかかる、また大学間の公平な競争環境を作りたい。そのためにもっと費用を負担してほしいと言うなら、個々の家庭ではなく国に求めるべきではないか。<図1>を見る限り、その余地はあるように思える。

「教育にも受益者負担の原則を」という意見もあるが、国民が高等教育を受けることで益を得るのは国だ。

<資料:文科省『学校基本調査』(2023年度)
    OECD「Education at a Glance 2023」

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