最新記事
宇宙

冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ます存在の謎がついに解明か 「地下に海」の可能性は低下

Mystery of How Pluto Got Its Heart Finally 'Solved' by Astrophysicists

2024年4月21日(日)13時00分
ジェス・トムソン
冥王星の地表

冥王星の地表のクローズアップ画像 REUTERS/NASA New Horizons

<スイスやアメリカの大学などの研究者たちで構成された研究チームは、奇妙な地形は天体の衝突によって形成されたと結論付けた>

冥王星の表面には、巨大な「ハート型の地形」が存在していることをご存知だろうか? なぜ、どのように、この形が作り出されたのか詳しいことは分かっていなかったが、科学者らがその謎を解明したと主張している。彼らの研究によればこの地形は、直径が400マイル(およそ650キロメートル)を超える天体が衝突してできたものだという。

■【写真】冥王星の地表に存在する「巨大なハート」/【動画】衝突のシミュレーションと「地下の海」の謎

準惑星に区分される冥王星の表面にある、このハート型の広大な地形は、2015年にアメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査機「ニュー・ホライズンズ」によって初めて観察され、「トンボー領域」と名付けられた。それ以降、天文学者は長年にわたって、その奇妙な形と地質学的な組成の謎に悩まされてきた。

そうしたなかでスイスのベルン大学、スイス連邦研究能力センター(NCCR)PlanetS、アリゾナ大学の科学者で構成される研究チームは広範囲に及ぶ研究の結果、トンボー領域の西側部分は、巨大な天体がゆっくりとした速度で斜めの角度から冥王星に衝突したためにできたという考えを示した。その詳細を論じた研究論文は2024年4月15日、「ネイチャー・アストロノミー」誌で発表された。

冥王星の表面には、明るい色の地形がいくつか存在するが、トンボー領域はそのなかでも最大で、直径は約1000マイル(1590キロメートル)に及ぶ。その名前は、1930年に冥王星を発見した天文学者クライド・トンボーに由来する。

カリフォルニア州の横幅ほどの大きさの天体が衝突か

ハートの西側部分はスプートニク平原と呼ばれ、周辺より標高が数マイル(3~4キロメートル)低く、窒素や一酸化炭素、メタンの氷で覆われている。この氷が太陽光を反射するため、地球からは明るく見える。このティアドロップ型の地形は、天体が衝突した際の衝撃でできたという。

研究論文の筆頭著者であるベルン大学の研究者ハリー・バランタインは声明で、以下のように述べた。「スプートニク平原が明るく見えるのは、その大部分が白い窒素の氷で覆われているためだ。その氷は移動し対流しているので、表面は常に滑らかなものになっている。この窒素はおそらく、衝突の後に、標高が低いその部分に急速に蓄積した可能性が高い」

新たに発表されたこの研究論文によれば、カリフォルニア州の横幅とほぼ同じくらいの直径の天体が、斜めに衝突したようだ。「スプートニク平原が細長い形状をしていることから、天体は、正面からではなく、やや斜めの方向から衝突したことが強く示唆される」。研究論文の共著者でベルン大学の研究者マルティン・ユッツィは声明でそう述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中