低すぎる出生率で迷走...中国政府は「中絶禁止」に向かうのか
CHINA’S BABY BUST
列車の窓から外を眺める母親と子供(2018年2月10日、黒竜江省ハルビン) Huang jinkun-Oriental Image via Reuters Connect
<人口維持に必要な水準を大きく下回る少子化は悪名高い1人っ子政策を放棄しても止まらない>
中国は何十年もの間、人口増加を抑えるために1人っ子政策を続けていた。だが今は、ほぼ回避不可能な人口減少の趨勢(すうせい)を、中絶の制限などで逆転させようと躍起になっている。
中国国家統計局は2023年1月、人口がここ数十年で初の減少に転じたことを明らかにした。今年1月に発表した23年の人口も前年を約200万人下回った。
豊富な労働力を追い風に経済を急成長させてきた中国にとって、由々しき問題なのは出生率の低下だ。約14億人の人口を有する中国にとって「初めての経験だ」と、人口と高齢化、格差の問題に詳しいカリフォルニア大学アーバイン校の王豊(ワン・フォン)教授(社会学)は本誌に語った。
「長期にわたる不可逆的で深刻な事態だ。国連のある予測では、中国の人口は今世紀末までに現在の半分を少し上回る程度になる可能性がある。2050年には人口の中央値、つまり人口の半分が50歳を超える。今世紀初めは40歳未満だった」
中国政府は22年に出産・子育て支援策を導入。出生数の増加を期待しているが、人口減少に歯止めはかかっていない。この程度の施策では不十分というのが専門家の見方だ。
この人口動態の変化は、欧米とよく似ている。乳幼児死亡率の低下とともに、生まれる子供の数は減り、子育ての費用が増えるにつれて、子供を持つ余裕がなくなる人々が増える。特に1980~90年代生まれのミレニアル世代は人生で2度の深刻な景気後退を経験している。
高齢者の面倒を誰が見る?
「多くの若者が子供も持ちたがらないし、結婚もしたがらなくなった」と、ハーバード大学フェアバンク中国研究センターで中国社会を研究するスーザン・グリーンハル教授は本誌に語る。「(中国の)子育て費用は法外で、韓国に次いで世界で2番目に高い。既に育児の負担と時間的制約に悩まされている女性にとって、2人目の子供の出産は仕事と収入、自由を失うことを意味する」