最新記事
バルト海

ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシア軍機に緊急発進

Germany's 'Luftwaffe' Deployed To Intercept Russian Plane Over Baltic Sea

2024年4月8日(月)14時45分
エリー・クック
ドイツ空軍のユーロファイター戦闘機

ドイツ空軍のユーロファイター戦闘機(2023年12月14日) dpa via Reuters Connect

<スウェーデンのNATO加盟により、バルト海沿岸の大半を西側に奪われたロシアが、過去1年で300回もバルト海で怪しい飛行を繰り返している>

ドイツ空軍は6日、ロシア軍機が1機、トランスポンダー(飛行位置や識別情報などを知らせる装置)を切った状態でバルト海上空を飛行したため、戦闘機ユーロファイターが一時、迎撃態勢に入ったと明らかにした。

ドイツ空軍のソーシャルメディアへの投稿によれば、ユーロファイターはラトビアの首都リガの南東にある町、リエルバルデから飛び立ったという。

問題のロシア軍機はIL20情報収集機。ドイツ空軍によれば、航空機の身元と飛行経路を追跡するために必要なトランスポンダーを切った状態でバルト海上空を飛行していたという。

本誌はロシア国防省に電子メールでコメントを求めたが回答は得られていない。

ヨーロッパ北部のバルト海は現在、大部分をNATO加盟国によって囲まれている。例外はポーランドとリトアニアに挟まれたロシアの飛び地、カリーニングラードだ。ここにはロシア軍の大きな基地があり、ロシア海軍のバルチック艦隊司令部が置かれている。

スウェーデンが3月初めにNATOに加入したことで、バルト海の北側と西側におけるNATOのプレゼンスは強まっている。

ドイツ空軍は 1月下旬にも、ロシアのIL20がトランスポンダーを切った状態でバルト海南部の国際空域を飛行していたため迎撃態勢を取ったと明らかにしている。IL20が「東に進路を戻すまでの短い時間、(NATO機が)近くを飛行した」という。

類似の事象は「1年間に300回以上」

フランス軍も2月末に、ロシアのIL20がエストニア沖を飛行していたため、ミラージュ2000-5戦闘機で迎撃態勢を取ったと明らかにしている。

NATOが1月に明らかにしたところによれば、欧州の加盟各国の空域にロシア軍機が接近したために迎撃態勢が取られた回数は、過去1年間で「優に300回を超えた」という。その多くがバルト海上空だったという。

NATOによれば「ロシア軍機が加盟各国の空域に予測不可能な方法で接近する様子を見せた場合」にはスクランブル発進を行うという。

2021年2月に始まったウクライナ侵攻をきっかけに、多くの国々、特に欧州諸国は安全保障政策や国防費の見直しを行った。NATOはロシアとウクライナに近い地域により多くの兵力を投入するようになった。

NATOは地上を拠点とした防空ネットワークに加え、戦闘機の配備数と偵察飛行の回数を増やしてこの地域における防空能力を増強したとしている。

「ロシアによるウクライナ侵攻は、この数十年間の欧州の安全保障において最も危険な状況だ」と、NATOの元報道官、ディラン・ホワイトは昨年、述べている。「NATOの戦闘機は四六時中、任務についており、同盟国の空域近くで疑わしい、もしくは予告のない飛行があった場合にスクランブル発進できる態勢を整えている」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中