「ラファ侵攻」を巡りアメリカとイスラエルの対立が激化、ネタニヤフが同盟国より優先するものとは?
Politics Over Peace
昨年10月18日、イスラエルを訪れたバイデン(左)はネタニヤフに支援を約束したが GPOーANADOLU/GETTY IMAGES
<ガザの「即時停戦」を求める安保理決議に同盟国アメリカは拒否権を行使せず、棄権。悪化するアメリカとイスラエルの関係には、実はもう一つの劇的出来事があった>
アメリカとイスラエルの関係は史上最低の水準に冷え込んでいる。主な理由は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相がパレスチナ自治区ガザでの戦争に対する強硬な姿勢を一歩たりとも、レトリック上でさえ、変えようとしないことだ。
そして、その理由はネタニヤフが国内で一握りの極右政治家に依存しているため。彼らの支持を失えば政権は崩壊するだろう。選挙になればネタニヤフが率いるリクード党はほぼ間違いなく敗北し、過去28年のうち通算17年にわたって就いてきた首相の座から追われることになる。
要するに、ネタニヤフはイスラエルにとって最も重要な同盟国との健全な関係よりも、国際社会におけるイスラエルの評判よりも、自身の政治生命を優先しているのだ。
しかし3月25日、2つの劇的な出来事が、なんと同じ日に起きた。
1つ目は、国連安全保障理事会でガザの「即時停戦」を求める決議案に、アメリカが拒否権を行使せずに棄権したことだ。
アメリカがイスラエルを批判する決議案に拒否権を行使してイスラエルを守るという常套手段を使わなかったのは、今回が初めてではない。
リチャード・ニクソンからバラク・オバマまで全ての大統領が少なくとも1回は(ロナルド・レーガンは7回も)、入植地の拡大やレバノン侵攻、パレスチナ人殺害の容認などの犯罪や不正行為について、イスラエルを非難する決議で棄権している。
それでもジョー・バイデン米大統領がここ数カ月で3回、同様の決議案に拒否権の行使を指示したことを考えれば、今回の棄権は異例だった。
2つ目の出来事は、アメリカが拒否権を行使しなかったことに反発して、ネタニヤフが政府代表団の訪米を中止したことだ(米政府高官は27日に、イスラエル側と日程の再調整を行うと表明した)。
ネタニヤフは5人の上級顧問をワシントンに派遣して、ガザ南部のラファにとどまっているハマスの指導部を、大規模な地上攻撃を行わずに根絶やしにする方法を話し合う予定だった。
ジェイク・サリバン米国家安全保障担当大統領補佐官はイスラエルに、ハマス殲滅という戦略目標を実現するための、より破壊的ではない方法を議論するように呼びかけていた。
つまり、ネタニヤフはアメリカの同盟国がほとんどやったことのない方法で、大統領と国家安全保障担当補佐官のメンツをつぶしたのだ。