最新記事
イスラエル

対イラン報復、イスラエルに3つの選択肢──核施設攻撃か、重要人物暗殺か、ハイテクで恥をかかせるか

3 Ways Israel Could Respond to Iran

2024年4月16日(火)18時39分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)

イランからの直接攻撃を受け、イスラエルのネタニヤフ首相が召集した戦時内閣(4月13日) EYEPRESS via Reuters Connect

<イスラエルとイランはいま、互いの武力と怒りを推し測る心理戦の真っ只中。これまでは、最悪のシナリオを恐れて両国とも手をこまねいてきたが>

イランは4月13日夜、在シリアのイラン大使館に空爆をしてイラン革命防衛隊の高官らを殺害した報復として、イスラエルにドローンやミサイルによる攻撃を行った。イスラエル側はこの99%以上を迎撃したとしているが、それでもイランに対する措置として、報復以外に選択肢はないと言っている。

【動画】宇宙戦争!? イラン無人機とミサイルの大規模波状攻撃を黙らせたイスラエルの最強の盾「アイアンドーム」

報道によれば、イスラエルのヨアブ・ガラント国防相は14日にロイド・オースティン米国防長官と電話会談を行い、反撃は不可避だと語ったという。だがジョー・バイデン米大統領をはじめとするバイデン政権の当局者らはイスラエルに対して、反撃するかどうかは慎重に考えるべきだと促している。バイデンはまたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対して、イスラエルがイランを直接攻撃する場合、アメリカとして参加または支持するつもりはないとも伝えた。

 

アメリカからの圧力を受け、イスラエルは選択を迫られている。高いリスクを犯して、イラン国内にある標的(核関連施設などの重要標的)を攻撃するか。それとも中東戦争に拡大するリスクを低減させるために、イラン政府に対するサイバー攻撃やイラン国外にいるイランの司令官を攻撃する、あるいはイランの支援を受けたヒズボラなどの代理勢力に対する攻撃など、より焦点を絞ったアプローチを取るか。

イスラエルは決断を急ぐべきではないと専門家

イスラエル戦時内閣の閣僚たちはベンヤミン・ネタニヤフ首相に迅速な行動を求めているが、専門家は決断を急ぐべきではないと警告している。

米国防総省の元アナリストで現在は米独立系シンクタンク「新米国安全保障センター」の中東安全保障プログラムのディレクターを務めるジョナサン・ロードは、「ものごとを戦略的に考えて動く者もいれば、単刀直入なやり方を好む者、直情的で無謀な行動を取る者もいる」と述べた。「おそらくイスラエルは反撃せざるを得ないだろうが、すぐに行動に出なければならないような差し迫った事情はない。急ぐ必要はない」

では、イスラエルに与えられた選択肢とは何か。

1)イランの核施設を攻撃する

アメリカのトランプ政権が6年前にイラン核合意を離脱して以降、イランは核開発を加速させている。アメリカの複数の高官は2023年、イランが核弾頭を搭載可能な兵器の製造を始めたかどうかは不明だが、核兵器の製造を決定した場合、早ければ数カ月で配備が可能かもしれないと示唆した。だとすれば、イランの核関連施設はイスラエルにとって相手に対する打撃という点で魅力的な標的となる――ただし攻撃すれば事態を大幅にエスカレートさせる危険がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

フジ・メディアHD、業績下方修正 フジテレビの広告

ビジネス

武田薬、通期の営業益3440億円に上方修正 市場予

ビジネス

ドイツ銀行、第4四半期は予想以上の減益 コスト削減

ビジネス

キヤノン、メディカル事業で1651億円減損 前12
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 3
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? 専門家たちの見解
  • 4
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 7
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中