銃乱射テロでプーチンはいかに弱体化を露呈したか
Putin Is 'Losing Control' in Russia: Dictator Expert
ボイズによれば、ウクライナとISの結びつきを強調するロシアのプロパガンダは「明らかにやり過ぎ」で、さしものロシア当局も今はトーンダウンし、「西側が背後で糸を引いていたことを漠然と示唆する」にとどめている。
その事実が物語るのは、プーチンの「ナラティブが説得力を失ったということだ」と、ボイズは述べている。このテロを契機に、プーチンはウクライナの戦線を現状のまま凍結し、ウクライナ戦争からより広範な「対テロ戦争」へと軸足を移すことも考えられるという。
今の危機はまた、「プーチンの統率力が低下し、肥大化した情報機関内部の権力闘争が彼の手に負えなくなっている」ことを示しているようだと、ボイズは述べている。
病院に運ばれた重傷者が死亡したため、テロの犠牲者は27日時点で140人になったと、ロシア当局の発表としてAP通信が伝えた。
テロ当日、IS傘下のグループISホラサン州(IS-K)が犯行声明を出し、ソーシャルメディアのIS-K系列チャンネルが銃撃の模様を伝える動画を公開した。
だがFSBのアレクサンドル・ボルトニコフ長官は西側のスパイ組織が関与していると断定。銃撃の容疑者はウクライナに逃れようしているところを逮捕されたと、プーチンの主張を繰り返した。
NATOへの挑発行為の口実に
とはいえベラルーシの権威主義的な指導者であるアレクサンドル・ルカシェンコ大統領によれば、容疑者一味は当初ベラルーシに逃げようとしたが、国境警備が厳重なためウクライナに向かったというのが真相のようだ。
『ロシアのFSB:連邦保安局の略史』の著者で、英ブルネル大学で情報・安全保障を講じているケビン・リールは、米政府が伝えた重要なテロ情報をロシア当局が無視したことを問題視し、ロシア国内のテロ対策はかなり手ぬるい状況になっているとみて、「今後が危ぶまれる」と本誌に語った。
「プーチンはタフな指導者のイメージが壊れることを恐れ、加害者をつかまえて処罰し、断固たる姿勢をアピールしようとしている」と、リールは言う。「テロを防げなかった責任をFSBになすりつけ、自分を国民を守るヒーローに仕立てようというのだ」
リールによれば、FSBはウクライナと西側の関与を示す「証拠」をでっち上げるかもしれない。
そうなれば、ロシアはそれを口実に「ウクライナの民間インフラをさらに容赦なくたたきつぶすだろう」と、彼は言う。「本格的な戦争にエスカレートしない範囲内で、NATO加盟国に挑発的な軍事行動を行う可能性も否めない」
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