トゥオン国家主席が「電撃的解任」ベトナム共産党版の反腐敗闘争に明日はあるのか?
Vietnam’s New Realities
国家主席の辞任だけでも大変な話だが、外国王室の来訪を中止させるなど外交にまで影響を及ぼすのは極めて異例だと、英字ニュースレター「ベトナム・ウイークリー」を発行するジャーナリストのマイク・タタースキは書く。
タタースキの記事の中で、ISEASユソフ・イシャク研究所のグエン・ハック・ジアン客員研究員は、これは「トゥオンの凋落がいかに急に起きたかを物語っている」と指摘している。
真の権力者をめぐる争い
ベトナムの政治プロセスは不透明で、トゥオンが国家主席に指名された経緯や解任のタイミングについても、さまざまな臆測が飛び交っている。ただ、トゥオンを指名したチョンのメンツがつぶれ、求心力が低下するのは間違いない。
昨年3月時点では、トゥオンを「チョン書記長の側近の中でも信頼の厚い人物」だとして、有力な後継者候補とみる専門家は少なくなかった。ベトナム政治の第一人者である豪ニューサウスウェールズ大学のカーライル・セイヤー名誉教授もその1人だ。
チョンが慎重に選んだはずの後継者が、チョンが一掃しようとしてきた汚職の容疑で断罪されたことは、ベトナムに完全に「クリーン」な政治家などほぼ存在しないことを示唆している。これでは党に対する国民の信頼を回復するのも難しいだろう。
なにしろ腐敗追放運動は8年間も続いているのに、いまだに記録的な数の汚職事件が摘発されている。それを論理的に説明できる理由は1つしかない。
ベトナムにおける腐敗は、一握りの悪徳政治家の仕業ではなく、構造的な問題である可能性が高いのだ。つまり、共産党の一党支配と切り離せない問題でもある。
また、現在79歳のチョンは、26年の党大会での退任がほぼ確実視されており、後継をめぐる党内の権力争いは今後激化する一方だろう。
今回、トゥオンが「引退」したことにより、候補者リストは短くなった。現在名前が取り沙汰されているのは、ファム・ミン・チン首相、ブン・ジン・フエ国会議長、チュオン・ティ・マイ党書記局常務、トー・ラム公安相だが、有力なのはマイとラムだと、ヒエップは言う。
2人とも、昨年のフック辞任後、トゥオンと並んで国家主席候補に名前が挙がっていたとされる。
「新たな国家主席が選出された後も、チョンが明確な権力承継計画を発表しない限り、党内の権力闘争は続くだろう」と、ヒエップは書いている。
「それまでは投資家もパートナー諸国も、ベトナム政治の新しい現実と付き合っていくしかない」
From thediplomat.com
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