最新記事
北朝鮮

日本やモンゴルに接近を図る、北朝鮮の隠れた狙い

The Mongolian Foray

2024年3月28日(木)18時50分
スミヤ・チュルンバートル
モンゴルのフレルスフ大統領 北朝鮮の朴明浩外務次官

モンゴルのフレルスフ大統領(右)は北朝鮮の朴明浩外務次官と関係強化を協議 OFFICE OF THE PRESIDENT OF MONGOLIA

<北朝鮮が中ロとの関係強化を目指しているのは周知のとおりだが、それ以外の国にも2国間関係の深化を働きかけている。戦略転換に何の目的が?>

新型コロナウイルスのパンデミック発生に伴う国境の全面的封鎖で、北朝鮮の外交的な孤立は一層深刻化した。だが昨年、防疫措置の緩和を決定。中国、ロシア、キューバ、そしてモンゴルの4カ国に限り、北朝鮮に駐在する外交官の交代を認めた。

北朝鮮が中ロとの関係強化を目指していることは周知のとおり。特にウクライナ戦争開始後はロシアに急接近している。加えて、さほど知られていないが、モンゴルなどにも2国間関係の深化を盛んに働きかけている。

3月には北朝鮮高官が5年ぶりにモンゴルを訪問した。10、11日に首都ウランバートルに滞在した北朝鮮の朴明浩(パク・ミョンホ)外務次官はモンゴルの外務次官と会談したほか、バトムンフ・バトツェツェグ外相とも会談。そればかりかモンゴルのオフナー・フレルスフ大統領にも歓待され、両国の長年にわたる友好関係をさらに発展させることを誓い合った。

朴のモンゴル訪問は注目に値する。北朝鮮が中ロに限らずさまざまな国にあの手この手で接近し、国際社会に受け入れられようとしていることをうかがわせるからだ。

北朝鮮はウランバートルを経由して、アメリカの忠実な同盟国である日本にも接触しようとしていると伝えられている。それを考えれば、朴の訪問を目前に控えた時期に、ウランバートルでモンゴルと日本の外交・防衛・安全保障当局間協議が開かれたこともただの偶然ではなさそうだ。

朝鮮半島に対するモンゴルの重要性をさらに浮き彫りにするのは、韓国がモンゴルとの関係強化に積極的に動いていることだ。2022年に韓国が発表したインド太平洋戦略にはモンゴルが「価値観を共有する」戦略的パートナーであることが明記されている。

北朝鮮の外務次官のモンゴル訪問に、韓国は神経をとがらせたに違いない。朴のウランバートル滞在中に韓国は、過去30年で最悪のゾド(寒雪害)で多数の家畜が死んだモンゴルに20万ドルの緊急人道支援を行うと発表した。

韓国とキューバが国交

朝鮮半島の政治的緊張の高まりに伴い、北朝鮮は2月上旬、韓国との経済協力合意を全て破棄することを決定した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中