日本やモンゴルに接近を図る、北朝鮮の隠れた狙い
The Mongolian Foray
モンゴルのフレルスフ大統領(右)は北朝鮮の朴明浩外務次官と関係強化を協議 OFFICE OF THE PRESIDENT OF MONGOLIA
<北朝鮮が中ロとの関係強化を目指しているのは周知のとおりだが、それ以外の国にも2国間関係の深化を働きかけている。戦略転換に何の目的が?>
新型コロナウイルスのパンデミック発生に伴う国境の全面的封鎖で、北朝鮮の外交的な孤立は一層深刻化した。だが昨年、防疫措置の緩和を決定。中国、ロシア、キューバ、そしてモンゴルの4カ国に限り、北朝鮮に駐在する外交官の交代を認めた。
北朝鮮が中ロとの関係強化を目指していることは周知のとおり。特にウクライナ戦争開始後はロシアに急接近している。加えて、さほど知られていないが、モンゴルなどにも2国間関係の深化を盛んに働きかけている。
3月には北朝鮮高官が5年ぶりにモンゴルを訪問した。10、11日に首都ウランバートルに滞在した北朝鮮の朴明浩(パク・ミョンホ)外務次官はモンゴルの外務次官と会談したほか、バトムンフ・バトツェツェグ外相とも会談。そればかりかモンゴルのオフナー・フレルスフ大統領にも歓待され、両国の長年にわたる友好関係をさらに発展させることを誓い合った。
朴のモンゴル訪問は注目に値する。北朝鮮が中ロに限らずさまざまな国にあの手この手で接近し、国際社会に受け入れられようとしていることをうかがわせるからだ。
北朝鮮はウランバートルを経由して、アメリカの忠実な同盟国である日本にも接触しようとしていると伝えられている。それを考えれば、朴の訪問を目前に控えた時期に、ウランバートルでモンゴルと日本の外交・防衛・安全保障当局間協議が開かれたこともただの偶然ではなさそうだ。
朝鮮半島に対するモンゴルの重要性をさらに浮き彫りにするのは、韓国がモンゴルとの関係強化に積極的に動いていることだ。2022年に韓国が発表したインド太平洋戦略にはモンゴルが「価値観を共有する」戦略的パートナーであることが明記されている。
北朝鮮の外務次官のモンゴル訪問に、韓国は神経をとがらせたに違いない。朴のウランバートル滞在中に韓国は、過去30年で最悪のゾド(寒雪害)で多数の家畜が死んだモンゴルに20万ドルの緊急人道支援を行うと発表した。
韓国とキューバが国交
朝鮮半島の政治的緊張の高まりに伴い、北朝鮮は2月上旬、韓国との経済協力合意を全て破棄することを決定した。