バイデン政権のもとで息を吹き返すアメリカの「労働運動」...国民の67%が「組合を支持」する理由とは?
THE UNION FIGHT
プラカードを掲げるスト中の全米脚本家組合のメンバー(ニューヨーク、昨年5月10日) SPENCER PLATT/GETTY IMAGES
<「死に体」だった労働運動がバイデノミクスで復活。AIや量子コンピューターの時代に労働者の新たな未来を示せるか>
アメリカで労働運動が勢いづいている。宅配ドライバー、医療従事者、ハリウッドの脚本家、自動車工場労働者。昨年は全米でさまざまな労働者が組合を結成し、ストを行った。ジョー・バイデン大統領は9月、現職大統領では初めてスト中の労働者のピケに加わっている。
自動車大手3社に対してストを行った全米自動車労組(UAW)のショーン・フェイン委員長は昨年11月、クライスラーの親会社ステランティスとの労使交渉での勝利を宣言し、こう述べた。「私たちは会社側に泣き付いたり、ひどい労働時間を受け入れることで、この結果を手にしたのではない。反撃して勝ったのだ」
バイデンは組織労働者に多くの闘いの場をもたらしている。マッキンゼーのリポートによると、「バイデノミクス」を構成する3つの主要な国内法(インフラ投資・雇用法、インフレ抑制法、半導体産業の振興を目的とするCHIPS法)は今後10年間で、インフラやクリーンエネルギー、製造業に2兆ドル超の連邦政府支出を新たに投入する。これら資金の大部分は、拠出される企業に労働組合との協働を義務付ける。組合にとっては近年まれに見る救いの手であり、急速に進化する21世紀経済の中で労働条件の改善を進める場が与えられることになる。
「経済が大転換期を迎え、私たちは岐路に立っている」と、ジョージタウン大学のジョセフ・マッカーティン教授(労働史)は本誌に語った。「現在の労働運動の復活は、将来の仕事の在り方に発言権を持ちたいという労働者の望みによるものだ」
組合側には前向きになれる理由がある。民主党は過去10年間に、これまで以上に進歩的で組合に優しい経済政策を取り、今や労働運動は大統領という強い味方を得た。
「バイデン以前の民主党は労働運動を、管理・育成し、取引関係を持つべき有権者グループと見なしていた。盟友だが、ファミリーではなかった」と、2022年までバイデンの労働問題顧問を務めたセス・ハリスは本誌に語った。「バイデンは違う。組織労働者を経済的・社会的アジェンダ全体の中心と考えている」
コロナ禍も労働に対する市民の姿勢を変えた。パンデミックが終わると、特に若い世代は労働条件の改善を期待し、組織労働者を支持する人が増えた。ギャラップ社の昨年の世論調査によると、アメリカ人の67%が労働組合を支持しており、1965年以来の高水準となっている。
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