最新記事
テキサス共和国

「テキサス州は30年以内に独立国になる」と明言...テキサス・ナショナリスト運動の「主張」

TEXIT DREAMS

2024年3月19日(火)17時40分
ジェームズ・ビッカートン(本誌記者)

newsweekjp_20240318043217.jpg

1836年のメキシコからのテキサス独立を祝う「独立記念日」のパレード ROBERT DAEMMRICH PHOTOGRAPHY INCーCORBIS/GETTY IMAGES

しかしテキサス政治プロジェクトのジョシュア・ブランク調査部長は、テクシットがブレグジットのように平和的に起こることはあり得ないと語る。さらに、たとえ独立が実現しても新しいテキサス国政府は、政府の役割はなるべく小さくあるべきだという共和党の基本理念とは正反対の存在になるとみている。

「歴史を振り返れば、テキサスが平和的に分離独立する現実的シナリオなど存在しないことは明らかだ」と、ブランクは言う。「それに実際の仕組みを考えれば、独立論のばかばかしさにすぐに気付くだろう。テキサスは、質が高いとは言えない現在の行政サービスを提供するのにも、連邦政府の財政支援を頼りにしている。それがなくなれば、州政府の負担は大幅に拡大することになる」

テキサス独立論の盛り上がりは、アメリカ全体における政治的緊張の高まりと無縁ではない。ドナルド・トランプ前大統領の強力な支持者として知られるマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は昨年2月、アメリカを「赤い州(共和党が優勢の州)と青い州(民主党が優勢の州)に分けて、連邦政府の役割を縮小する」という「国内の離婚」を提案して、激しい議論を巻き起こした。

ただ、その後、世論調査ユーガブとエコノミスト誌が共同で実施した世論調査では、この提案に賛成するアメリカ人は23%にとどまり、反対と答えた人が62%に達した。

カリフォルニアでも独立論

それでもグリーンが国家の分断という議論に火を付けたことは、テキサス独立論にとって「有益」だったとミラーは語る。

その一方で、アメリカを民主党が優勢な州と共和党が優勢な州に二分するという構想については否定的な考えを示した。「(アメリカは)主権を持つ50の州からなる連合だ。支持政党によって分断されたアメリカはあり得ない。究極的には(州の)自発的な連合だから、この関係を続けたいかどうかは各州が判断すればいい」

実際、独立論が盛り上がっている州はテキサスだけではない。16年大統領選でトランプが勝利したときは、「カレグジット」(民主党が優勢なカリフォルニア州の合衆国離脱)という言葉がを飛び交った。

その後、カリフォルニア大学バークレー校政府研究所が実施した世論調査によると、「カリフォルニア州が独立を宣言して、単独の国家になることを求める州民投票の実施」を支持する人は、民主党支持者の間で44%、州全体でも32%に達した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中