ミャンマー「解放区」の実像:3年前のクーデターの勢いが衰えた国軍に立ち向かう武装勢力の姿
A RESISTANCE STRONGHOLD
状況が一変する可能性も
農家出身のセシリアは、故郷に戻りたくても戻れない。
デモソ東部の実家は空爆と砲撃で破壊されてしまった。
しかも時がたつにつれて、地域社会や国外在住ミャンマー人からの義援金も減ってきたと感じている。
「なんとかして家を建て直し、農園を復活させたい。この戦争が終わったら、一からやり直しだね」
筆者の取材に応じた国内避難民の誰もが、既に2度も3度も避難を重ねている。
KNDFのマルウィ副司令官によると、国軍は州都ロイコー防衛のためにデモソやメーセから兵を引いた。
おかげで今は、こうした地域が反軍勢力の支配下にある。だから今のうちに人々が戻ってきて、農業を再開してくれたらいい、とマルウィは言う。
「革命の火を燃やすのは民衆の底力だから」
今や反軍政の火の手は国内各地で上がっているから、国軍としても全てには対応できず、戦略的な要衝に戦力を集中せざるを得ない。
国際危機センターのホージーによれば、例えばロイコーだ。
州都であり、近くには重要な水力発電所があるし、首都ネピドーからも遠くない。一方、タイと国境を接する山間の町メーセなどの優先順位は低い。
ではデモソの町はどうか?
「デモソの状況は微妙で、どちらへ転んでもおかしくない。今のところは無事だが、ひとたび国軍がロイコーの制圧に成功すれば、次はデモソへ攻め込むかもしれない」とホージーは言う。
だから油断は禁物。
「全てが不安定だ。今の解放区も、いつ取り返されるか分からない」
<本誌2024年3月12日号掲載>