韓国全土で医療の混乱、政府の医師不足解消策に反発して研修医は大規模ストを強行した
公共病院や中規模病院に患者が殺到しており、診療を受けられる病院を自力で見つけることができない軽症患者が救急車を呼ぶケースが増えるなど、出動回数が通常の倍以上になった消防署もあり、急車の遅延が続いている。
事態を重く見た保健福祉部は23日、保健医療災難(災害)危機警報の警戒レベルを最も高い「深刻」に引き上げた。27日には看護師が、法令の範囲内で研修医が担ってきた医療行為を行う計画案を発表した。
政府対医師団体、法廷での対立激化
これまで医師会は政府との対立で無敗だった。2000年には医薬分業を進める政府の方針に反発して大規模ストライキを実施し、2014年には遠隔医療の推進に反発した。2020年7月にも保健福祉部が打ち出した大学医学部の定員増に反発してストライキを辞さない強硬な態度を見せたことから文在寅前政権が撤回したが、尹錫悦政権に撤回の考えはない。
2月27日、保健福祉部は医師らのストライキが法令で禁止している診療拒否に該当するとして医師協会関係者5人を医療法違反と業務妨害、教唆・ほう助などの疑いで告発した。また、現場を離脱した研修医には業務開始命令を発令。2月29日までに復帰しない場合、医療法違反に基づく免許停止や起訴などの法的措置を取る考えを示した。その一方で、職場復帰すれば不問に付すと付け加えている。
世論支持増で政府方針に追い風
世論は政府に味方する。保健医療労組が行なった世論調査で回答者の89.3%が定員増に賛成しており、世論調査会社が医学部定員増の発表後に行なったアンケートでも与党「国民の力」支持者の81%、最大野党「共に民主党」支持者の73%が賛成するなど、回答者の76%が肯定的で、29%に落ち込んでいた政権支持率は政府と医師協の対決の激化に併せて39%まで回復、60%前後で推移していた不支持率も53%に下がった。国会議員選挙の投票日まで6週を切ったいま、尹錫悦政権が方針を変える可能性はない。
医療水準の低下を危惧する声や少子化と人口減が続くなか医師の増加を懸念する研修医の気持ちは理解できるという声もあるが、患者を人質に取る行為は許されないし、そもそも患者が犠牲になることを厭わない研修医は医師になるべきではない。
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