トランプ「ウクライナの次は台湾だ」再登板で米国は台湾を見捨てるのか?
TRUMP AND TAIWAN
アメリカで支援者に向けスピーチをする次期台湾総統の頼清徳(昨年8月) LOREN ELLIOTTーREUTERS
<トランプはインタビューでは台湾を守る意思を明確にせず、「半導体産業を奪われた」とお門違いの非難も展開する。再選すれば台湾海峡、波高し。本誌「もしトラ」特集より>
中国政府によれば、米大統領選でドナルド・トランプが再選された場合、アメリカは台湾を見捨てる可能性があるらしい。
「アメリカは常に『アメリカ第一主義』を追求している。台湾は『将棋の駒』から『捨て駒』にいつでも変わり得る」と、中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の陳斌華(チン・ピンホア)報道官は1月末に述べた。
これは昨年7月、トランプが経済専門ケーブルテレビ局FOXビジネスのインタビューで、台湾が半導体産業を独占していると批判するとともに、台湾防衛への積極姿勢を見せなかった件についてコメントを求められて答えたものだ。
問題のインタビューでトランプは、台湾が中国による侵略の対象となる地政学的リスクについて問われ、「かつてアメリカは、自分たちの半導体を自分たちで作ってきた。だが今や半導体の90%は台湾製だ」と語った。
「台湾はアメリカのビジネスを奪い去った。われわれは連中を止めるべきだった。税金をかけるべきだった。関税をかけるべきだった」
そしてトランプは「その(有事の際に台湾を守るかどうかという)質問に答えてしまうと、交渉における私の立場は非常に悪くなるだろう」と述べた。
有事を回避するためのアメリカと台湾、中国の間の駆け引きがいかに複雑かは、分かっているらしい。
だが、半導体産業の問題と安直に結び付けて語ったことには批判も出た。
「トランプ(前)大統領の発言は、中国政府を喜ばせるだけだ」と、戦略国際問題研究所の中国専門家ブライアン・ハートは本誌に語った。
「中国側はアメリカの信頼性に対する疑念を台湾の大衆に広げる手段として、SNSなどを使ってきた」
中国政府は台湾は中国の一部だと主張し、1月の台湾総統選挙を「平和か戦争か」の選択と位置付けていた。
だが勝利したのは、中国とは距離を置く民進党の頼清徳(ライ・チントー)。総統選が直接選挙になって以降、同じ政党が3期連続で政権を担うのはこれが初めてだ。