最新記事
中国

「くまのプーさん」だけじゃない習近平のあだ名、その数546種類。「包子」「小学博士」「2-4-2」...

WHAT’S IN A NAME

2024年2月21日(水)17時45分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)
習近平

最高権力者が過度に侮蔑の対象になると……(ドイツの祭りの山車) KAI PFAFFENBACHーREUTERS

<中国人が最高権力者をあだ名で呼ぶことは珍しいが、習近平だけは例外。あだ名に込められた意味を知れば、習と中国の行く末が見えてくるかもしれない>

中国人はあだ名を付けるのが大好きだ。けれども、敬意ゆえか恐怖ゆえか(おそらく恐怖のほうが大きいだろう)国の最高権力者をあだ名で呼ぶことは珍しい。

毛沢東のあだ名として知られているのは、中国共産党と当時敵対関係にあった国民党の支持者が用いた「毛賊」というものだけ。2代前の最高権力者である江沢民のあだ名も「蛤蟆」(ガマガエル)だけだった。

その点、習近平(シー・チンピン)のあだ名の数は桁違いだ。ニュースサイト「チャイナ・デジタル・タイムズ」によれば、2022年半ばの時点であだ名の数は546種類に上っている。ことごとく不名誉な呼称だ(それに比べれば、西側諸国で広まっている「くまのプーさん」はずいぶん穏健な呼称と言える)。それらのあだ名は大きく6つのカテゴリーに分類できる。

第1は、習への侮蔑の気持ちを表現したあだ名。「包子(パオズ)」(肉まん)は、北京の肉まん店を訪れた習の様子が大きく報じられたことをきっかけに広まったものだが、そこには「土包子(トゥーパオズ)」(田舎者)を揶揄するニュアンスも込められている。

「小学博士」は、王朝時代の中国で最高レベルの学者に与えられた尊称である「太学博士」にかけた言葉遊びで、習が中学と高校を卒業してないことを当てこすったあだ名だ。

第2は、演説原稿の中の慣用句を正しく読めないことを皮肉るもの。「通商寛衣」は、演説で「通商寛農」という言葉(交易を促進して、農家への課税を減らすという意味)を読み間違えたことに由来する。中国の簡体字では「農」を「农」と書くため誤読したのだろうが、「寛衣」では、裸になるという意味になってしまう。

第3は、習をコケにするもの。「二百斤」は文化大革命の時代に農村に下放されたときに、200斤(100キロ)の穀物を背負って山道を5キロ歩き続けたと自慢したことをネタにした。

第4は、軽く呪いをかけるようなもの。「翠」というあだ名はその1つだ。翠という漢字は2つの「羽」と「卒」で構成されていて、「習死す」と読むことができる。

第5は、明確な悪意によるもの(中国の国内で用いるのは危険だ)。「習特拉」は、中国語の発音が同じナチス・ドイツの独裁者ヒトラー(希特拉)にかけたものだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

商船三井の今期、純利益を500億円上方修正 市場予

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高の流れを好感 徐々に模

ワールド

トランプ氏「BRICS通貨つくるな」、対応次第で1

ワールド

米首都の空中衝突、旅客機のブラックボックス回収 6
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中