【アウディーイウカ陥落】ロシアの近接航空支援や滑空爆弾に対しウクライナ軍の空域には穴が開いていた
How Ukraine Lost Avdiivka
ウクライナ軍部隊が前線としていたアウディーイウカのコークス工場(2月15日) REUTERS/Alexander Ermochenko
ウクライナ軍は2月17日、東部ドネツク州の激戦地アウディーイウカからの撤退を発表した。ロシア軍にとっては、2023年5月に同じくドネツク州にあるバフムトを制圧して以降、初めての大きな戦果となる。
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ロシアの国営テレビはこの勝利を称え、ウクライナ軍が防衛線を敷いていたコークス工場など、アウディーイウカの各地で青と黄色のウクライナ国旗が白・青・赤のロシア国旗に置き換えられる様子を放送した。
こうしたなか、ウクライナ軍が過去1週間に直面してきた厳しい状況についての詳細が明らかになりつつある。アウディーイウカの戦いではロシア軍も多くの兵士や設備を失ったが、ウクライナ軍もかなりの犠牲を被ったと報じられている。
ウクライナメディアのRBCによれば、新しくウクライナ軍総司令官に就任したオレクサンドル・シルスキーは先週はじめにアウディーイウカを訪問。その後、2月15日までには、欧米供与の兵器で装備を固めた精強な第3独立強襲旅団をアウディーイウカに投入したという。
ウクライナ軍は現地で、あらゆる方面から攻撃を仕掛けてくるロシア軍の7つの旅団に応戦しなければならなかった。RBCの報道によれば、ウクライナ軍のマキシム・ゾリン司令官は、「こちらの兵士6人で守っているところに、約100人のロシア兵が猛攻を仕掛けてくることもあった」と述べた。
ロシアが兵力で7倍、砲弾発射数で5倍
ウクライナ軍のオレクサンドル・ボロディン報道官は、ロシア軍の兵力はウクライナ軍の7倍だったと説明。またバフムトでは「肉弾戦」を仕掛けてきたロシア軍が、アウディーイウカには爆弾や大砲を備えた独立自動車化狙撃旅団やその他の専門部隊が送り込んできたと述べた。
またRBCは、ロシア軍は誘導爆弾や戦車、歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車やFPV(一人称視点)ドローンをほぼ「無制限に」使用することができたと伝えた。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのシンクタンク「LSE IDEAS」のシニア・アソシエイトであるレオン・ハートウェルは、アウディーイウカがロシア軍に掌握された原因として、「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による大幅な軍備増強、西側諸国の明確な目標の欠如、そして西側諸国によるウクライナへの『支援の約束』と『現実の支援』の大きな隔たり」の3つが挙げられると指摘した。
「ウクライナ軍はロシア軍に対して圧倒的に不利な条件で、前線での砲弾発射数はロシア軍が5倍と圧倒された。アウディーイウカはその悲惨な例だ」とハートウェルは指摘。「ロシア軍は1日に1万発近くの砲弾を発射しているのに対して、ウクライナ軍の砲弾数は以前の約1万発から現在は2000発に激減している」「ウクライナ軍がアウディーイウカでここまで持ちこたえたことのほうが驚きだ」