最新記事
ウクライナ

【アウディーイウカ陥落】ロシアの近接航空支援や滑空爆弾に対しウクライナ軍の空域には穴が開いていた

How Ukraine Lost Avdiivka

2024年2月20日(火)14時59分
ブレンダン・コール

ウクライナのネットメディア「キーウ・インディペンデント」は、ウクライナ軍がアウディーイウカを防御していた第110機械化旅団に増援を送るなど、撤退が遅れたことで大勢の兵士の命が失われたと報じた。シルスキーが正式にアウディーイウカからの撤退を発表したのは、17日の午前2時のことだった。第110機械化旅団のイワン・セカチ報道官はキーウ・インディペンデントに対して、同旅団の全ての部隊がアウディーイウカから撤退したと述べた。

ジャーナリストでウクライナ研究者のコンスタンティン・スコルキンは、「結局は、以前からアウディーイウカ撤退を提案していたワレリー・ザルジニー前総司令官が正しかったということだ」と本誌に述べた。それに対してウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「アウディーイウカを守るよう軍に要請し、各拠点に配備された兵士たちの元を個人的に訪れて激励して」きた。

 

米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、ロシアは過去数日間、地上部隊の攻撃を支援する「近接航空支援」をしたと説明。アウディーイウカの複数カ所で、撃墜がほぼ不可能な滑空爆弾を使用した攻撃も行った。

ロシアに一時的に局地的な制空権を奪われた

ISWは、ロシアが連日猛攻撃を行えたことは、「ウクライナ側がアウディーイウカ周辺の空域へのアクセスを遮断することができなかった」ことを示唆しており、ロシア軍が一時的に局地的な制空権を確保して第110機械化旅団を撃退したと結論づけた。

「重要なのは、次に何が起きるかだ。ウクライナ軍には、ロシア軍がドンバス地方の完全支配に向けて進軍するのを阻止するための新たな防衛線があるのだろうか」とスコルキンは述べた。「(ロシア軍の)次なる狙いはドネツク州の中心都市スラビャンスクだ」

「プーチンはアウディーイウカ制圧を祝い、これを大勝利だと宣伝するだろう。だがロシア軍が被った損失を考えれば、これが大勝利ではないことは明らかだ」と彼は言う。「ロシア軍には、今回のような作戦を続けていくための資源があとどれぐらい残っているのだろうか」


20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中