最新記事
中東

親イラン武装組織による米軍攻撃、イラン革命防衛隊の司令官が介入・中断させていた

2024年2月19日(月)21時06分
ロイター
イラン革命防衛隊 コッズ部隊

イラクで活動する親イラン武装組織が1月28日にヨルダン北東部の米軍施設を攻撃した翌日、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」の司令官がバグダッドを訪問して説得し、攻撃中止につながったことが、複数のイラン・イラク情報筋の話で分かった。写真はコッズ部隊のイスマイル・ガアニ司令官。テヘランで2022年4月撮影。提供写真(2024年 ロイター/Majid Asgaripour/WANA)

イラクで活動する親イラン武装組織が1月28日にヨルダン北東部の米軍施設を攻撃した翌日、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」の司令官がバグダッドを訪問して説得し、攻撃中止につながったことが、複数のイラン・イラク情報筋の話で分かった。

コッズ部隊のイスマイル・ガアニ司令官は29日、バグダッド空港で武装組織の代表者数人と会談した。ヨルダンにある米軍施設「タワー22」への無人攻撃で米兵3人が殺害された事件を受け、米政府が武装組織を非難してから48時間も経っていなかったという。

ガアニ氏は、米兵を殺害すれば米国の激しい反撃に遭う恐れがあると指摘。上級指揮官への米軍攻撃や、重要なインフラの破壊、あるいはイランへの直接的な報復を避けるため、身を潜めるよう武装組織を説得した。

当初ガアニ氏の要求に応じなかった派閥もあったが、他のほとんどの派閥は同意した。

主要組織、神の党旅団(カタイブ・ヒズボラ)は翌日、攻撃を中断すると発表した。

2月4日以来、イラクとシリアにおける米軍への攻撃は皆無だ。イスラエルによるガザ攻撃に反対して紛争が広がる中、ガアニ氏が訪問する前の2週間には米軍への攻撃が20回以上行われていた。

「ガアニ氏が直接介入しなければ、カタイブ・ヒズボラに緊張緩和のための軍事行動停止を説得することは不可能だっただろう」と、イラン系イラク武装組織のある幹部は語った。

ガアニ氏の訪問についてはイラクのメディアで言及されているが、同氏のメッセージの詳細や攻撃減少への影響についてはこれまで報じられていなかった。

ロイターは、イラン政府高官3人、イラク治安当局高官1人、イラクのシーア派政治家3人、イランが支援するイラク武装組織の消息筋4人、イラク関係の外交官4人に話を聞いた。

<イラクと米の協議再開>

イランと米国、両方と同盟関係にある数少ない国のひとつであるイラクは、駐留米軍を撤退させるためにアメとムチを使い分けてきた。情報筋5人によると、ヨルダンの米軍施設に対する攻撃を受け、自国が再び外国勢力の戦場になるのを防ぎたいイラクは、イランに武装組織の行動を抑えるよう要請した。

イラクの与党政治家は、今回の攻撃がイラク政府にとって絶好の機会になったと明かす。ガアニ氏の説得で攻撃が小康状態になったことで、米軍駐留終了に関するイラクと米国の協議は2月6日に再開した。

イラクで活動する複数のイラン系組織も、米軍駐留を終わらせるためには攻撃よりも対話が好ましいと考えている。

<攻撃再開の恐れ>

イランの治安当局高官は 「ガアニ司令官の訪問は成功したが、すべてのイラク人グループが非エスカレーションに同意したわけではない」と言う。小規模だが非常に活発な組織「ヌジャバ」は、米軍は力ずくでしか撤退させられないとし、攻撃を継続する方針を示した。

攻撃中断がいつまで続くかは分からない。米軍が7日、バグダッドでカタイブ・ヒズボラ幹部を殺害したのを受け、強硬派を代表する傘下グループは作戦再開を宣言している。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、12月にも利下げ余地 段階的な緩和必要=キ

ワールド

イスラエルとヒズボラ、激しい応戦継続 米の停戦交渉

ワールド

ロシア、中距離弾道ミサイル発射と米当局者 ウクライ

ワールド

南ア中銀、0.25%利下げ決定 世界経済厳しく見通
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中