ドナルド・トランプの大統領選、「最大の敵」は連邦最高裁...「自分だけは特別」の主張は認められるか
Trump v. Supreme Court
トランプはどちらの裁判でも、事実上、自分だけは例外で、過去に何をしても再び大統領になれるし、刑務所送りは逃れられると主張している。
だが、その理由付けはかなり弱い。例えば、コロラド州最高裁判決を不服とする上告審の申立書で、トランプ側は、大統領は修正14条第3項で再任を禁止される「合衆国の高官」に当たるのか、そして大統領職は「合衆国の」公職を意味するのかといった細かな点を争っている。
こうしたトランプ陣営の戦略を、ジョージタウン大学法科大学院のマーティ・リーダーマン教授は、「ここでいう大統領職が合衆国の公職でないとしたら、どこの話だというのか。オハイオか? フランスか?」と皮肉っている。
「歴代大統領のうち自分とワシントンだけが例外」
リーダーマンは、トランプの2つの主張を整理してくれている。まずトランプは、大統領職は「合衆国の」公職ではないので、修正14条第3項の適用はないという。
第2に、同項によれば「過去に連邦議会の議員、合衆国の高官、州議会の議員」などとして「合衆国憲法の擁護を宣誓した者」が対象となるが、トランプはこれに該当しないという。確かに大統領に就任する人のほとんどは、それより前に州知事や議員などの公職に就いたことがあり、そのとき憲法を守る宣誓をしているが、ビジネスマン出身のトランプにはその経験がない。
トランプは最高裁に提出した書面で、こうした例外扱いが認められるのは、自分だけだろうと認めている。「歴代大統領46人のうち、ジョージ・ワシントンとドナルド・トランプを除く全員が、憲法修正条項が定める前職に就いていたため、第3項の適用を受ける」というのだ。
トランプは、ワシントン連邦地裁に起訴された刑事訴訟でも同じような例外扱いを主張している。
この裁判は3月初旬に公判が予定されていたが、トランプは大統領として行ったいかなる公的な行為も(選挙結果を転覆する試みでさえも)刑事責任を免れると主張して、その部分だけ先に連邦控訴裁判所の判断を仰いだため、その判断が下されるまで公判はストップすることになった。
ただ、控訴を受けたワシントン地区連邦控訴裁判所は2月6日、たとえ選挙介入が公務の一部だったとしても、刑事責任を問われることは免れないという判決を下し、トランプの最高裁への上告期限を11日までと設定した。