最新記事
中東情勢

イスラエル軍の「ラファ地上侵攻」はアメリカの中東政策を破壊する

Biden Faces New Problem Over Israel's Rafah Offensive

2024年2月13日(火)18時50分
ダニエル・ブッシュ(本誌ホワイトハウス担当)

10月7日のハマスによるイスラエル攻撃をきっかけに、中東で再び紛争が勃発して以降、エジプトは再びアメリカにとってきわめて重要な同盟国として存在感を強めてきた。ハマスは7日のイスラエル攻撃で約1200人を殺害し、約240人を拉致。報復に立ち上がったイスラエルは、ガザ地区でのハマス壊滅を目指して大規模な軍事作戦を開始した。

アメリカはエジプトをはじめとする地域のパートナーと緊密に連携し、2023年11月にイスラエルとハマスの戦闘停止を実現させた。エジプトも、戦闘に巻き込まれたガザ地区の民間人に食料や医薬品などの人道支援物資を届けるための国際的な取り組みを支援してきた。

一方で、エジプトはガザ地区との境界の警備をさらに強化し、ガザ地区の住民がエジプトに逃れることは認めない姿勢を明確にしている。

ガザの保健省によれば、戦闘開始以降、イスラエル軍によって殺害されたガザの民間人は2万8000人を超えている。ガザ地区の人道危機が悪化するなか、米与党・民主党の進歩派からも、イスラエルへの支援を続けるバイデンへの批判の声が上がっている。さらにイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が2月9日に、ラファへの進軍に向けて軍に計画提出を指示したとしたことを受けて、バイデンに対して戦闘を終結させるよう求める圧力がますます高まっている。

バイデンはラファ侵攻に強い懸念を表明

イスラエル首相府の声明によれば、ネタニヤフは軍に対して9日、ラファから民間人を退避させ、また同地域に残っているハマスを壊滅させる「同時計画」の策定を指示した。首相府は声明で、「ラファにハマスの4大隊が残っているままではハマスの壊滅を達成することは不可能」と説明した。

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、この発表を受けてエジプトは、イスラエルとの平和条約を停止する可能性を警告した。バイデンも11日、ネタニヤフとの電話会談で、ラファ侵攻に先立ち民間人の安全を確保するよう警告した。ホワイトハウスは、「(バイデン大統領は)ラファに避難している100万人超の民間人の安全を確保し、支援を行うための確実に実行可能な計画なしに、同地域への軍事作戦を進めることはできないとの考えを改めて示した」と述べた。

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中