最新記事
パキスタン

パキスタン総選挙、カーン元首相・シャリフ元首相の双方「勝利宣言」...異例の結果発表遅れ、混乱一段と

2024年2月11日(日)12時10分
ロイター
パキスタン 総選挙

パキスタンで2月8日に実施された総選挙は100以上の議席について結果が明らかになり、カーン元首相を支持する無所属候補者が優勢と地元メディアが報じた。写真は9日、ラホールで自由で公正な選挙結果を求めて集まったカーン氏支持者(2024年 ロイター/Navesh Chitrakar)

パキスタンで8日に実施された総選挙(下院、定数336)は、9日1830GMT(日本時間10日午前3時30分)までに集計された245議席のうち、カーン元首相を支持する無所属候補者が98議席を獲得し、全体で最多の議席を獲得している。

今回の選挙は265議席を対象に行われ、単純過半数を取るには133議席が必要。

カーン氏は国家機密漏えいなどの罪で収監されており、同氏が率いる最大野党パキスタン正義運動(PTI)の候補者はPTI候補としての出馬が認められず無所属として出馬した。

一方、シャリフ元首相の与党「パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派」(PML─N)は69議席と、単独では最多の議席を獲得。暗殺されたブット元首相の息子、ビラワル氏のパキスタン人民党(PPP)は51議席獲得となっている。

これを受けてカーン氏とシャリフ氏はそれぞれ勝利を宣言した。シャリフ氏は、党単独では明確に過半数を獲得できなかったため、連立政権樹立に向け他政党と協議する方針を示した。

今回の総選挙では、武装勢力の攻撃で28人が死亡するなど、投票日にかけて治安が悪化し、携帯電話サービスが停止した影響で開票作業が遅れた。パキスタンで選挙結果の発表が遅れるのは異例。選管高官は「インターネットの問題」が遅れの原因と説明した。

今回の選挙について、アナリストからは単独過半数を獲得する政党はなく、複数政党による連立政権になるとの見方が出ていた。さらに、経済危機からの回復に苦闘する一方、政治的二極化が進む中で武装勢力が台頭するなど、同国社会の混迷に拍車をかける可能性も指摘されていた。

アナリストの予想通り連立政権となれば、同国が直面するさまざまな課題への対応が複雑化することが予想される。差し迫った問題は国際通貨基金(IMF)の新たな支援プログラム。現行のプログラムは3週間後に終了する。

今回の選挙プロセスに対し、米国、英国、欧州連合(EU)は9日、懸念を表明。活動家の逮捕など選挙干渉の疑惑に言及し、不正の可能性を十分に調査すべきだとした。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中