周囲を「敵国」に囲まれたパキスタン...頻発する「国境紛争」が、経済危機にとどめを刺すのか
Bordering on a Crisis
総選挙に向けて警備が強化される国内最大の都市カラチ(2月7日) Akhtar Soomro-Reuters
<イラン、アフガニスタンそしてインド......。終わりの見えない隣国との火種が、経済危機からの回復を妨げる>
1月中旬以降、イランとパキスタンの間で越境攻撃が相次いだ。標的は双方とも、相手国がかくまっていると主張する自国の分離独立主義勢力。両国関係は緊張したが、早期の外交努力で沈静化した。
だが、この出来事はパキスタンがイランとの国境地帯に抱える安全保障上の課題を浮き彫りにした。パキスタンはアフガニスタンとの国境でも、テロの脅威に苦慮している。
1月29日にはパキスタン南西部バルチスタン州のマッハで民兵による攻撃があり、同州の分離独立を掲げるバルチスタン解放軍(BLA)が犯行声明を出した。パキスタンはBLAが長年にわたりイランに潜伏していると主張し、18日にはBLAを標的としてイランを攻撃していた。
マッハの事件の2日前には、イラン南東部サラバンでパキスタン人労働者9人が殺された。パキスタンはBLAか同系列の組織の犯行とみている。
タリバン復権以降、アフガニスタンからの攻撃が増加
パキスタンは、北西部のアフガニスタンとの国境地帯でも脅威を抱えている。アフガニスタンで2021年にイスラム主義勢力タリバンが再び権力を掌握して以来、同国に拠点を置くパキスタン・タリバン運動(TTP)によるパキスタン国内への攻撃が増えた。TTPを抑えようとしないタリバンと、その長年の盟友であるパキスタンの間に緊張が高まっている。
皮肉なことだが、敵対し続けてきたインドとの国境地帯は、21年の停戦合意以降、目立って静かになった。だが最近、パキスタン国内で市民2人が殺害された事件について、パキスタン側がインド諜報員による暗殺だと主張しており、緊張が高まっている。
さらにパキスタンは、インドが長年にわたりBLAを支援してきたと訴え(インドは否定)、マッハでの攻撃もインドが関与したとしている。
南アジアでは、ほかにも国境地帯での争いが増えている。インドとブータンは共に、中国と国境をめぐって争っている。ミャンマーの内戦は国境を越えてバングラデシュに影響が波及した。インドは最近、安全保障上の懸念からミャンマーとの国境にフェンスを設置する計画を発表した。