「株式会社ハマス」の時価総額は5億ドル超、世界各地の系列企業の資金網がガザを支える

HAMAS, INC.

2024年2月9日(金)10時36分
ショーン・オドリスコル(犯罪捜査担当)

240213p18_HMS_08L.jpg

ハマスの指導者、ヤヒヤ・シンワール(壇上前列右から2人目) LAURENT VAN DER STOCKT/GETTY IMAGES

「ドゥディンは、所有権を第三者に移すことでトレンドGYOとハマスとの継続的関係の隠蔽を図った。また(ガザ地区の政治部門トップの)ヤヒヤ・シンワールとも直接的な協力関係にある」との指摘もある。

さらにドゥディンは「以前にハマス政治部門幹部サレハ・アル・アルーリから数万ドルを受け取っており、ドゥディンはこれらの資金を使ってハマスのために武器を購入し、それがテロ攻撃に使われ、イスラエル兵に死をもたらしている」という。

なおアメリカは15年8月27日にシンワールを、同年9月10日にアルーリを制裁対象にしている(アルーリは今年1月2日、レバノンの首都ベイルートで何者かに殺害された)。

米財務省はトレンドGYOをアメリカの制裁リストに加えるに当たり、同社を「ハマスの投資ポートフォリオの一部」で、「かつて5億ドル以上と見積もられていたハマスの海外資産の重要な構成要素」と認定した。

当時トレンドGYOの会長を務めていたイエメンの大富豪ハミド・アル・アフマルはアメリカの制裁リストに載っていないが、同社の18年の公募増資書類には、ハマスの隠れ蓑としてアメリカの制裁リスト入りしているレバノンの組織アル・クドゥス国際財団の理事長と記載されている。

またアフマルはハマス支持を公然と口にしている。

本誌はトレンドGYOがトルコ財務省に提出した書類を精査し、株式の所有者に変化があることを発見した。

23年9月30日付で提出されたトレンドGYOの直近の財務報告によると、22年末には45.74%だった公開株が55.4%に増加している。

個人の筆頭株主はアラエッディン・セングーラーで全体の22.19%、次いでアルワ・マングーシュが12.07%、グルサ・イギドグルが10.34%となっている。

この3人はいずれもハマスへの「実質的な援助、後援あるいは財政的、物質的、技術的支援」を行ったとして、昨年11月に制裁リストに加えられた。

3人のうちサウジアラビア国籍の女性アルワ・マングーシュはトレンドGYOの共同設立者であるサレハ・マングーシュの親戚で、彼から全株式を譲渡されている。

トレンドGYOを調査したトルコ人ジャーナリストのアブドゥラ・ボズクルトによると、同社はハマスの資金隠蔽に関わる一方で、軍事活動に必要な資金を稼いでもいる。

「トレンドGYOがこの両方の役目を果たしていることは間違いない」とボズクルトは言う。「この会社は不動産開発業者だ。そして今のトルコでは、不動産の売買でいくらでも稼げる。しかも株式を一部公開しているから、一般の市民や投資家からも資金を調達できる」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:トランプ関税で荷動きに懸念、荷主は「

ワールド

UBS資産運用部門、防衛企業向け投資を一部解禁

ワールド

米関税措置の詳細精査し必要な対応取る=加藤財務相

ワールド

ウクライナ住民の50%超が不公平な和平を懸念=世論
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中