「株式会社ハマス」の時価総額は5億ドル超、世界各地の系列企業の資金網がガザを支える
HAMAS, INC.
さらに、カフィシェを制裁対象リストに載せた22年の米財務省資料によると、カフィシェはハマス投資部門のナンバー2であり、「ハマスの投資ポートフォリオに含まれる複数企業の資金移転」に重要な役割を果たしてきた。
その1つがトレンドGYOだ。集合住宅や商業施設の販売会社で、投資家向けにトレンドREITという不動産投資信託も設けている。
本誌がトルコの企業情報を精査したところ、23年9月時点でトレンドGYOの株式は55%が市場で取引されており、一般市民や投資家から広く資金を調達していた。
同社の資料によると、トレンドGYOはトルコ全土で、AGプラザを含めて12の大型プロジェクトを完成させている。
同社が過去16年間で建設した商業ビルと住宅は合計で4万6500平方メートル以上になるという。
同社が開発したトルコ北部ブルサ市にある高級集合住宅の広告には、「近代的な建築と緑地による穏やかな生活への鍵」を提供するとある。
だが華やかな言葉の裏に、宣伝したくない事実が隠されている。
22年5月にトレンドGYOを制裁リストに載せた際、米財務省は「18年の時点で、トレンドGYOの発行済み株式の約75%をハマス分子が保有していた。さらにハマスは同社の株式1500万ドル相当を組織の幹部らにひそかに融通することを計画していた」と述べている。
同社のコーポレート・ガバナンス報告書によると、トレンドGYOの株式を大量に保有していたのは次の3人。
前出の会計士カフィシェ(13%)とイエメンの大富豪で実業家かつ政治家のハミド・アル・アフマル(17%)、そして同社副会長でイエメン国籍のサレハ・マングーシュ(30%)だ。
米財務省によると、中東各地にあるハマス系建設会社の運営とハマス本部への資金還流に最も深く関与しているのはカフィシェだ。
トレンドGYOとハマスの関係を隠蔽する役目を果たしている人物には、ガザ地区のハマス指導部と密接な関係にある元自爆テロ・コーディネーターのムサ・ドゥディンもいる。
ドゥディンは終身刑で収監されていたが、11年の捕虜交換(拉致されたイスラエル兵とパレスチナ人収監者1027人の交換)で自由の身となった。
米財務省は、ドゥディンが他人に株式を譲渡することで、ハマスの関与を隠蔽しようとしていたと指摘している。
23年10月18日にドゥディンとトレンドGYO関連の幹部数人に対する制裁を発表した際の報道発表によれば、「ドゥディンはヨルダン川西岸を拠点とするハマス政治局のメンバーで、投資部門の職員であり、獄中のハマス戦闘員らの解放交渉も担当している。公の場でハマスを代表して発言してもいる」。