「株式会社ハマス」の時価総額は5億ドル超、世界各地の系列企業の資金網がガザを支える

HAMAS, INC.

2024年2月9日(金)10時36分
ショーン・オドリスコル(犯罪捜査担当)

英カーディフ大学法学部の教授でテロ組織の資金問題に詳しいニコラス・ライダーによれば、不動産会社を利用するハマスの手口は決して珍しいものではない。

「不動産会社は彼らの資金調達に役立つ便利な存在だ。世界の不動産市場は、テロ組織にとっても組織犯罪グループにとっても安全な投資先となっている」とライダーは言う。

さらに「不動産セクターは住宅ローン詐欺を通じて個々のテロ行為の資金調達にも利用されており、アメリカでは関連するテロ資金調達事案でいくつかの有罪判決が出ている」と付け加えた。

■UAE

UAEの登記情報によると、トレンドGYOの共同設立者サレハ・マングーシュは04年、同国で人口が3番目に多い都市シャルジャでイトカン・リアルエステートを設立している。

建設・設計業で登録されている会社で、国内各地に数億ドルのオフィスビルを所有していた。

同社の22年の財務報告によると、サウジ国籍のサレハ・マングーシュは同社の「ゼネラルマネジャー」であり、株式の49%を保有していた。

UAEの法律では最近まで全ての企業に株主の51%をUAE国籍者とするよう義務付けていた。マングーシュの49%という持ち株比率は、この規定に沿ったものだ。

22年5月の米財務省の制裁リストによると、イトカンは「ハマスの知られざる投資ポートフォリオに含まれる複数の営利企業の1つ」だ。

19年半ばにはイトカンの「評価額1億5000万ドルの資産」の売却案が持ち上がった。UAE内のオフィスビル関連と思われるが、詳細は米財務省の文書にも記載されていない。

なおイトカンは最近までシャルジャで営業していたが、摘発を受けたようで、米政府の制裁対象となってからは「休業状態」にあるとされる。 

本誌は23年11月と12月に同社に接触を試みたが、電話は通じず、メールも戻ってきた。

■サウジアラビア

トレンドGYOの18年の公募増資資料によると、サレハ・マングーシュはサウジアラビアにあるアンダ・カンパニーの創業者でもある。

当該資料によれば、サレハ・マングーシュはアンダ・カンパニー株の20%を保有し、肩書はやはり「ゼネラルマネジャー」だ。他にもサウジで数社を設立している。

米財務省によれば、アンダも「ハマスの大規模な投資先の1つ」で、22年5月に制裁リストに加えられている。また同社の実質的な経営者は前出の会計士カフィシェとされる。

マングーシュと共にトレンドGYOの役員に名を連ねる男だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、テキサス州空港の発着禁止を解除 カルテル無人機

ビジネス

1月米雇用、13万人増と予想大幅に上回る 失業率4

ビジネス

中国、仏の対中関税提言に反発 対抗措置示唆

ワールド

ハイネケン、最大6000人削減へ ビール需要低迷
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    崖が住居の目の前まで迫り、住宅が傾く...シチリア島…
  • 7
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 10
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中