「株式会社ハマス」の時価総額は5億ドル超、世界各地の系列企業の資金網がガザを支える

HAMAS, INC.

2024年2月9日(金)10時36分
ショーン・オドリスコル(犯罪捜査担当)

■スーダン

スーダンを拠点とする大富豪で、ハマスに資金を出しているアブデルバシット・ハムザ・エルハッサン・モハメド・ハイルは「アルカイダやウサマ・ビンラディンにつながるスーダン企業との関係が深く、テロ組織への資金調達に長年関与」している。

これは米財務省が23年10月18日にハイルを制裁対象とした際の説明だ。

ハイルはスーダンに本社を置くザワヤ・グループのCEO兼オーナーでもあり、この会社も同じ日に米政府の制裁リストに加えられている。

米財務省によると、ハイルはラリーコム・インベストメント・カンパニーというスーダン企業も所有し、やはりCEOを務めている。この会社も米政府の制裁対象だ。

トルコ国籍のカフィシェはスーダンでの事業にも深く関わっている。

トレンドGYOが公募増資に当たって提出した資料によると、カフィシェは00年にスーダンへの投資を開始し、10年以降は首都ハルツームにあるハイル所有の2社、アグロゲート・ホールディングとアルルワド・リアルエステートの取締役を務めている。

両社とも今は米政府の制裁対象に加えられている。

トルコ財務省への提出書類によると、06年に同国で不動産投資を開始したアルルワドを通じて、カフィシェは「トルコで多数の住宅、オフィス、商業ビルの予備調査と建設」に参加してきた。

また米財務省によれば、彼はアグロゲートの役員とアルルワドの会長も務め、「アグロゲートの幹部候補の面接・採用」にも関わっていたとされる。

アグロゲートは10年以上にわたり、スーダンの建設業界をリードしてきた企業の1つだが、その親会社は前出のザワヤ・グループだ。

同グループが09年にスーダン政府と、スーダン~エジプト間の幹線道路の建設と運営を請け負う40年契約を結んだ際に、そのプロジェクトの受け皿として設立されたのがアグロゲートだ。

一方でアルルワドは、米財務省によると、スーダンを拠点とする複数のハマス系企業が合併して10年に誕生した。

米財務省によれば、カフィシェはこの会社でも「雇用と解雇に関する決定権を持ち、同社の財務にも関与」していた。

■スペイン

ハマスのグローバルな資金調達網は拡大を続けている。

次なる拠点は、どうやらスペインらしい。

スーダンを拠点とする大富豪ハイルはスペインに「ザワヤ・グループ開発投資」なる企業を設立している。

ただしこの会社も、昨年10月に米政府の制裁対象となった。

ハマスはなぜ、ヨーロッパにまで進出しようとするのか。

中東では監視の目が厳しく、動きにくいという事情があるのかもしれない。

◇ ◇ ◇


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 2
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 7
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 8
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 7
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 8
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中