「イスラエルの民主主義」が示された「つかの間の勝利」...最高裁の判断とは?
THE COURT SAYS NO
ネタニヤフは、ハマスとの戦争を一種の保険と見なしているようだ。彼の戦争に対する姿勢は、政治生命の維持と密接につながっており、司法改革の悪影響と10月7日の攻撃に対する自らの責任を軽減する唯一の方法は、いかなる代償を払ってでもハマスに対する決定的な勝利を追求することだという明白な信念を反映している。
ネタニヤフによる「司法クーデター」の試みは阻止されたが、今回の民主主義の勝利はつかの間のものかもしれない。主戦論者やメシア主義的な入植者、冷笑的な日和見主義者からなる連立政権は無傷のまま、権威主義的な政策を追求し続けるだろう。さらに、エスター・ハユット首席判事とアナト・バロン判事の退任により、最高裁はリベラル寄りではなくなった。
最高裁の画期的な判決の意義は、特に存亡を懸けた戦争の最中では、いくら強調してもしすぎることはない。リベラルな最高裁は、ガザでの戦争を地中海からヨルダン川までの領土拡大を実現する好機と見なす過激派に対抗する民主主義勢力の味方であると証明された。
しかし、今回の民主主義勢力の勝利は、進行中の戦争の陰で繰り広げられている、イスラエルの魂をめぐる大きな闘いの一部にすぎない。
シュロモ・ベンアミ
SHLOMO BEN-AMI
イスラエル元外相。世界各地の紛争解決を目指す「トレド国際平和センター」副所長。著書に『戦争の痕、平和の傷──イスラエルとアラブの悲劇』がある。