毛沢東の上を行く「邪悪で安定した習路線」...共産党と政府の二分化構造はもはや過去に【アニメで解説】
Newsweek Japan-YouTube
<習体制の中国はどこへ向かっているのか? 中国の統治構造のこれまでとこれからを解説したアニメーション動画の内容を一部紹介>
2つに分かれた中国の統治構造を、巨大な一枚岩のモデルに移行しようとしている習近平国家主席。二分化構造の歴史的な理由と、習の「権力掌握」の新たな意味を考える──。
本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「毛沢東を超える? 「邪悪で安定した習近平路線」で弱い経済と強い支配が拡大【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。
軍や政府や民間組織、さらには営利企業にも「党細胞」を送り込む手法を発案したのはウラジーミル・レーニン率いるボリシェビキで、ロシア革命直後の1918年に反革命派と戦う赤軍に思想教育や規律強化目的で「政治委員」を配置したのが始まりだった。
その後、1927年には「秋収蜂起」に失敗した毛沢東が、寄せ集めの兵士を強力な戦闘部隊にするためにボリシェビキの案を借用。中国共産党では、これは天才的な毛が考案したものとされている。
今日、中国の指導者は国事に紳士然としたスーツで登場することが多いが、彼らは盗用を恥じない中国共産党の末裔にほかならない。
1949年の中国建国以降、新たに誕生した共産党政府にも同じモデルが導入された。これは巨大な官僚機構を担う人的資源が党になく、旧体制の生き残りである非党員の役人に国家運営を頼るしかなかったためだ。
中国の統治構造は現在も2つに分かれている。上から下まで、あらゆる「政府チーム」が「党チーム」に支えられ、監視される仕組みだ。
こうした体制には無駄が多い。共産党員の数が膨れ上がって、政府上層部には党員しかいない状態となり、二分化体制は重複化した。極端(だが、ごく一般的)な例を言えば、全く同じ組織が対外的には「政府」、国内では「党」の名の下で機能している。
習はこれまでに、国務院系のグループの業務を党中央に吸収してきた。その狙いは何なのか──。
党中央が掲げる一元的指導体制、意思決定機関に非党員がほぼ存在しない現実、および「中華帝国」の伝統に照らしてみれば、「脱盗用」を図っているという解釈がしっくりくる。レーニン流の二分化した統治モデルから、巨大な一枚岩の構造へ移行しようとしているというものだ。
ただし、これが良策かどうかは疑問だ。権力分配は偏っているが、党と政府の二分化体制には一応チェックアンドバランス(権力の抑制と均衡)が存在する。毛時代の中国が完全な混乱に陥らずに済んだのはこのためだ。
中国は現在、地方政府の深刻な債務問題、不動産バブル崩壊と金融危機の懸念、外国直接投資(FDI)の急減、失業率の上昇(特に若年層)に見舞われている。
深刻な状況にもかかわらず、共産主義体制では経済問題の解決のために党の主義主張を犠牲にすることは許されない。毛時代の経済的惨事から中国を救い出そうとした鄧小平はそれ故に、民主化要求デモで体制の政治的生き残りが問われた89年、ためらわずに自国民を虐殺した。
その点、政治生命も体制も全く脅かされていない習の立場はずっと強い。おかげで習には、4つの経済的大問題に取り組みながらも、自身の政治計画を実行する余地があるのだ。
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