最新記事
要衝

【マップ】台湾はなぜ世界的に重要な戦略的要衝なのか

Map Shows Why Taiwan Is So Important to the World

2024年1月15日(月)15時38分
マイカ・マッカーシー
アメリカのナンシー・ペロシ下院議長の訪台に抗議し、台湾周辺に戦闘機を飛ばす中国

アメリカのナンシー・ペロシ下院議長の訪台に抗議し、台湾周辺に戦闘機を飛ばす中国(2022年8月7日)EYEPRESS via Reuters Connect

<喜望峰やスエズ運河をも凌駕する船が台湾周辺を行き来しており、台湾有事となれば世界のGDPの10%が失われる>

総統選挙を終えたばかりの台湾周辺の海上交通地図が、世界貿易における台湾の重要性を浮き彫りにしている。

オープンソースの船舶追跡サイトであるマリン・トラフィックで、直近の1年分のデータである2022年の状況を見れば、膨大な数の船舶が台湾周辺を行き交っていたことがわかる。地図上の色が濃いエリアほど、航路が密集している。

 

台湾は、製造大国である中国、日本、韓国に原材料を供給する航路の中心に位置する。この3カ国は2019年、世界の製造業生産高の40%近くを占めていた。米海軍協会による2023年11月報告書によれば、2022年、世界のコンテナ船5400隻のほぼ半数が台湾海峡を通過した。

taiwanmap.png

もう1セットの画像は、2024年1月12日時点のリアルタイム海上交通だ。台湾周辺の船舶密度に比べると、アフリカの喜望峰、さらには、世界で最も交通量が多い航路の一つであるスエズ運河さえも、船舶がまばらに見える。

<台湾周辺>
taiwanrealtime.png MARINE PACIFIC

<アフリカ喜望峰>
realtimeafrica.pngMARINE PACIFIC

<オマーン湾、紅海、スエズ運河>
realtimeredsea.pngMARINE PACIFIC

台湾は、戦略的に重要な位置にあるだけでなく、卓越したチップメーカーとして半導体供給の中心的な役割も担っている。台湾では、世界の先端半導体の90%以上が製造されている。

ジョー・バイデン米政権の高官は1月11日、台湾総統選挙を前にした記者会見で、「台湾海峡の平和と安定が損なわれたら、世界経済に深刻な影響を与え、その結果、世界各国の経済に影響が及ぶだろう」と説明した。

1月13日に行われた台湾総統選挙では、「台湾独立」を志向すると言われる民主進歩党が勝利、中国は反発している。もし兵力数と船舶数で世界最大の陸海軍を誇る中国と戦争になれば、世界の貿易が混乱に陥るだろう。

ブルームバーグの最新分析では、そのような戦争が現実になれば、世界経済は10兆ドル規模の打撃を受け、世界のGDPは10%縮小すると予測されている。

台湾の安全保障において主要な役割を果たすアメリカは、台湾の民主主義と戦略的重要性を繰り返し支持してきた。

前述の米政権高官は記者会見で、「アメリカは、台湾の民主的プロセスに全幅の信頼を置いる」と述べた。

アメリカ政府は1979年、国家の承認を台湾から中国に切り替えたが、台湾と事実上の外交関係をもち、武器売却もして中国をいら立たせてきた。

しかし、米国はまた、台湾が公式に独立を宣言しない現状を支持し続けている。台湾が独立を宣言すれば戦争に突入すると、中国は警告している。

台湾の蔡英文総統は、台湾はすでに独立しているため、改めて独立を宣言をする必要はない、という論法を使ってきた。

(翻訳:ガリレオ)


20250401issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月1日号(3月25日発売)は「まだ世界が知らない 小さなSDGs」特集。トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英GSK、帯状疱疹ワクチンの認知症リスク低下効果を

ビジネス

タイ自動車販売、長期低迷からの回復には時間=業界幹

ビジネス

牧野フライス労組、ニデックTOBに「強く反対」 十

ワールド

ベトナム、対米関税引き下げへ LNGや自動車など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 5
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中